◆がん教育の成果と課題及び今後の方向性について
玉井質問

本県における死亡原因第1位を占めるがんは、2014年4,526人を数え、全死亡数に占める悪性新生物の割合は25.8%に達しています。

また、死亡率減少に有効とされるがん検診受診率は、さまざまな施策を講じているにもかかわらず、50%以上という計画目標に及ばない状況にあり、受診率向上に向けた取り組みの強化が急務となっているほか、愛媛県がん対策推進委員会からは、緩和ケア、在宅医療、相談支援対策の強化や、県下市町の司令塔となる県のがん対策立案機能の強化、事業の継続・拡充を可能とする確実な予算措置などの要望が寄せられ、がん対策のより一層の推進を図る必要があると考えています。

文部科学省では、学校教育の中でがんの教育を推進し、がんに対する正しい理解とがん患者に対する正しい認識及び命の大切さに対する理解を深めることで、みずからの健康管理やがん予防にもつながるとして、昨年度からがんの教育総合支援事業に乗り出しています。

本県でも、今年度は県内中学校で3校、高等学校で1校に専門医やがん患者などを講師として派遣し、講演会や教職員対象の研修会を実施しています。また、がん教育に係る指導参考資料の製作にも取り組んでおられると聞き及んでいます。

このような中、全ての議員で構成する愛媛県議会がん対策推進議員連盟は、先月、がん教育の先進地、鹿児島県内の公立小学校を視察してまいりました。視察先となった薩摩川内市立隈之城小学校における「いのちの授業」と題したがん教育は、NPO法人に所属するがん患者さんが先生役につき、45分間の授業に臨んでいました。ここ鹿児島県におけるがん教育は、2010年10月、4小学校、約500人を対象にスタートさせ、2014年度までに小学校28校、中学校4校で実施、計3,433人の児童生徒と向き合っており、今年度は実に35校前後の授業を行っているとのことでした。

実施に当たっては、小児がん既往歴の児童生徒や児童生徒の家族にがん経験者や闘病中、亡くなった方がいる場合や、別途支援が必要となる子供への注意点の確認、保護者への授業参観の要請、事前アンケートの実施、冊子を利用した基本的ながんの知識の準備学習、子供たちから質問の提出といった入念な事前準備を経て、いのちの授業指導案に基づいた授業が行われます。

授業の後には、事後アンケートや感想文の提出、児童生徒一人一人に対する手紙の返信などのフォローと、実に1カ月を超える時間を要しているのです。

先生と呼ばれるがん患者さんが、教壇に立つという責任を重く受けとめながらも、明るく子供たちと向き合っている生きた授業の様子に、深い感銘を覚えたのは私一人ではなかったかと思います。

授業を受託したNPO法人は、がん教育を広く展開していく上で、教職員を対象に学校におけるがん教育の意義などを伝える研修や、体育館での講演会ではなく、教室での授業形式で、なるべく子供たちの名前を呼びながら目を合わせてなどのこだわりを持って臨んでいるほか、いのちの授業語り手講座も開講して、がんサバイバーである語り手の育成にも取り組まれているとのことでした。

そこで、お伺いいたします。
がんの正しい知識と態度を子供たちに身につけさせることが重要であるため、国は、来年度までの成果を踏まえながら、2017年度以降、がん教育を本格的に全国展開することとなります。がん教育を受けた子供たちから親に対し検診受診を促すなど、逆世代教育の先進事例などを参考とし、本県におけるがん教育がよりよい形で本格的にスタートができるよう期待するところであります。

本県が取り組んでこられたこれまでのがん教育の成果と課題及び今後の方向性について御所見をお聞かせ願いたいのであります。


理事者答弁(井上正教育長)

県教育委員会では、これまで児童生徒の健康の保持増進と疾病予防の観点から、小学校の体育科及び中高校の保健体育科におきまして、がん予防を含めた健康教育に取り組んでおり、平成26年度からは推進校を指定しまして、がんに対する正しい理解やがん患者に対する正しい認識、命の大切さに対する理解を深めさせることを目的に講演会や研修会を開催するとともに、その成果を他校に周知・啓発しているところでございます。

児童生徒にとりましては、専門医やがん患者、経験者の方から直接話を伺うことによりまして、がんの正しい知識を身につけるとともに、自他の健康と命の大切さを実感し、家族への思いやりや自己の生き方を考える貴重な機会となっており、教職員にとりましても、日々の教育活動に生かすことができるなどの成果が見られますが、一方で、講演会で得た知識等の定着、複数の教科を通した系統的な指導や、家族にがん患者がいる児童生徒への配慮など、学校におけるがん教育の進め方についてはさらに検討する必要があると考えております。

現在、国では、平成29年度からの全国展開に向け、がん教育のあり方の検討が進められているため、その動向を注視しつつ、今後、学校や講師が活用できる教材や学習指導案を推進校に提示しまして、保健部局はもとより、がん患者や専門医等と連携しながら、効果的ながん教育を推進できるよう努めてまいりたいと考えております。