◆移住の在り方や戦略、地域の受け皿づくりについて
玉井質問

先月16日、ふるさと暮らしを希望する都市住民と全国の地方自治体とをマッチング支援するNPO法人ふるさと回帰支援センターが、移住希望地域ランキング2015を発表いたしました。首都圏から近い地の利も相まって、毎年、長野、山梨両県が安定した人気のようです。また、移住の相談件数は前年比1.7倍となる2万1,584件が寄せられ、東日本大震災以降、子育て世代が全体の45%を占めるなど、特に20代から30代のUターン希望者が顕著となっているとのことでした。

昨年、8カ月をかけて巡礼した四国霊場12番札所焼山寺参拝後、宿泊先とした徳島県神山町は、人口5,800人余りの過疎の町でありながら、町並みにどこか空気の違った感がありました。後で知ることになったのですが、この町は、3つの独自性を持って地域活性化に挑んでいるのでした。その一つが、行政ではなくNPO法人など民間主導であること、2つ目が、ハードではなくソフト中心の取り組みであるということ、そして3つ目が、創造的過疎であり、これら明確なビジョンと戦略に基づき移住者を呼び込む形でスタートさせたのです。

その後、アーティストの誘致が話題となり、建築家や映像作家、写真家やアートディレクター、ITベンチャー企業家などが町にやってくるようになったのです。むしろ地元NPO法人が移住希望者の逆指名を行い、既にスキルを持った人が仕事ごと神山町にやってきたという方が正解なのかもしれません。

また、ユニークな移住支援活動としては、数多くある古い空き家を移住希望者に紹介し、安値で住居やオフィス、アトリエとして提供しているほか、過疎化を皆で受け入れ、将来の人口構成の健全化に力を入れていることも見逃せません。毎年何人のUターン・Iターン者がいれば町が存在していけるのか、数値を算出して地域再生を目指しているのです。

その結果、2010年度、11年度の2年間で、23世帯46人が移住し、うち子供は12人に上っています。11年度には、転出者139人に対し転入者が151名と、町制施行以降初めて転入者が転出者を上回ったことにも驚きです。

そこで、お伺いいたします。
本県では、2016年度重点戦略事業として、移住者住宅改修支援やえひめの移住力総合強化事業などの予算が上程されております。さきに紹介した徳島県神山町では、実に20年以上にわたる試行錯誤の中で今日があると言えます。愛媛に人を呼び込む移住のあり方や戦略、地域の受け皿づくりについての御所見をお聞かせ願いたいのであります。



理事者答弁(中村時広知事)

少子高齢化の進展等を背景に本格的な人口減少期を迎えた本県にとりまして、移住の促進は、社会減対策として直接的な効果が期待されるだけでなく、地域活力を維持していく上でも重要な取り組みとなりますことから、先般策定した県版総合戦略においても主要な施策として位置づけ、移住者の誘致に向けた効果的な情報発信やきめ細かな相談ができる体制の構築など、幅広い取り組みを進めているところでございます。

特に、具体的な誘致においては、中長期的な視点から、人口の自然増にも結びつく子育て世代や地域の担い手となる働き手世代をメーンターゲットとして位置づけまして、来年度から新たに移住者の経済的な負担を軽減する思い切った住宅改修支援制度を創設するほか、地域の実情を踏まえた具体的な相談やサポートを行う地域版移住コンシェルジュや移住相談員の配置などにも取り組みたいと考えています。

また、移住者の誘致に当たりましては、住民みずからが地域の将来像を描き、地域にとって必要な人材を呼び込むという能動的な取り組みが成功の鍵となりますことから、地域における移住の受け皿づくりに向けて、市町と連携しながら、地元の機運醸成や住民主導の空き家の掘り起こしなどを積極的に働きかけているほか、受け入れ地域と移住者双方がメリットを享受し、数多くの成功事例を生み出すために、地域と都市部の移住希望者をマッチングさせる移住体験事業などにも取り組んでいるところでございます。

全国各地で移住者誘致をめぐる取り組みが本格化する中で、今後とも、市町との緊密な連携のもと、愛媛暮らしの魅力を最大限発信するとともに、相談・サポート体制の一層の充実・強化に努めながら、人口減少に一定の歯どめをかけられるよう、戦略的かつ重層的な移住施策を進めてまいりたいと思います。