◆健康経営に取り組む県内企業への支援策について
玉井質問

日本の国民皆保険制度は、団塊の世代が75歳となる2025年に大きな転換期を迎えることとなります。厚生労働省の推計では、医療給付費が2012年度の1.5倍に当たる約54兆円に、介護給付費についても2.3倍の約19.8兆円に増加が見込まれることから医療費2025年問題と称され、医療費抑制への取り組みとともに生産年齢世代における治療から予防へと医療政策の力点を移す取り組みが重要視されているのです。

生前、伊藤前西条市長がよく口にされていた市内中小零細企業従業員の健康をカバーするヘルスセンター構想と病院保健師から提案を受けた職場いきいきプロジェクトの熱き思い、これらを行政とつなぎ合わせ、先月末、西条市において「健康経営」について学ぶ・考えるセミナーの開催に至りました。

先進企業として御報告いただいたのは、電線の製造で創業し、連結ベースで従業員数5万3,400人余りを誇るエネルギー・情報通信カンパニーのフジクラグループ。従業員の健康を重要な経営課題と捉え、経営として健康増進、疾病予防に取り組まれておられました。

導入のきっかけは、健康経営に関するキーワードでもあるプレゼンティズム。欠勤するほどのぐあいの悪さではなく、出社はしているものの心身の不調によって生産性が低下している状態を示す言葉ですが、総労働時間のうち約2割の時間において業務遂行能力に何らかの障害が出ているとの報告事例に着目をしたそうです。経営コストや社員の健康状態、健康増進プログラムや健康経営評価など多様な側面から健康推進活動の投資効果を指標化し、経営層と共有しながらPDCAサイクルを回し、一過性のイベントにとどまらず、活動を効果的かつ効率的、継続的に運用するシステムを構築しています。さらには、健康保険組合にあるレセプトと個人の健康診断結果など散在した健康データを一元的に管理・分析し、健康増進、疾病予防活動において一次予防の領域から重症化予防の三次予防まで全てのステージの予防活動とともにリスク階層やリスク内容、治療状況に応じた健康支援策を実行しているのです。

これら経営者、労働組合、健康保険組合における三位一体の健康経営の取り組みにより、生産性向上、医療費適正化、労働環境の向上が図られ、働きながら健康を維持・増進できる就労環境を目指すとしているものです。

また、内閣総理大臣を本部長とする健康・医療戦略推進本部では、次世代ヘルスケア産業協議会を設置し、アクションプラン2015の中で企業向けに保険者機能を補完・充実する健康経営の推進や自治体の投資環境整備など健康投資基盤の整備を経済産業省、厚生労働省が一体となって取り組みを進めています。

大分県では、健康経営を目指す事業所を登録し、各種健康増進への取り組みを促進させ、最終的に健康経営事業所として認定、情報発信する健康経営事業所認定事業に取り組んでいるほか、鳥取県においては、社員の健康づくり宣言を行った企業が社員の健康づくりに取り組んだ場合、メニューに応じてポイントを付与し、広報や表彰を行う健康経営マイレージ事業に取り組むなど企業に対するサポートが各地で進んでいます。

また、長野県では、健康経営を自治体にも導入し、健康診断の結果などを参考に職員一人一人が自分の健康状態や生活習慣を見つめ、自主的な取り組み目標を掲げて健康づくりを推進するマイエースチャレンジという事業を始めています。

そこで、お伺いいたします。
中小企業の多い本県では、健康経営を行う意義やメリットへの理解、実践に向けたノウハウ、予算、人材面での体制など幾つもの課題がありますが、医療費抑制にもつながる健康経営に県・保険者・医療機関・企業が一体となって知恵を絞り予防に取り組むことが必要だと考えます。

県は、この健康経営の取り組みを始めたいとする県内企業に対しどのような方針をもって支援策を講じようとするのか、御所見をお聞かせ願いたいのであります。

また、経済産業省では、自治体の健康予防事業に関して医療費の適正化の努力に応じた成果報酬型のインセンティブなどを検討するとしていますが、健康志向の高い首長がそろう県内自治体においても実践可能なマネジメントであると考えられます。まずは県職員を対象とした健康経営の導入の可能性について、あわせて御所見をお伺いいたします。



理事者答弁(中村時広知事)

県では、第2次県民健康づくり計画、えひめ健康づくり21に基づきまして、健康寿命の延伸と健康格差の縮小など5つの基本的な取り組み方針を掲げ、全ての県民が健やかで心豊かに生活できる活力ある社会の形成を目指しており、働く世代の多くを占める県内企業の従業員の健康づくりは重要な課題と考えています。

このため、保健所ごとに職域を含めた健康づくりを推進する県民健康づくり運動地域推進会議や企業の健康管理担当者等に対する健康づくり指導者養成セミナーを開催するほか、特にものづくり企業が多く立地する東予地域においては、モデル的に「愛顔のけんこう応援レター」メールを各企業に配信するなど企業の健康づくり活動の支援に積極的に取り組んでいるところであり、今後、中・南予地域へ拡大できればと考えております。

また、企業にとって人材は、成長を支える経営資源の源泉であり、健康経営は、医療費の抑制はもとより企業業績の向上や従業員の定着率向上につながることが期待でき、現在、国において中小企業の健康経営推進のための政策パッケージの策定が行われていますので、今後、県内企業のニーズを踏まえ健康経営への取り組みに対する効果的な支援方策を検討していきたいと思います。

さらに、県職員を対象とした健康経営の実践につきましても、これまで各種検診における対象者の拡大など職員の健康管理事業を積極的に拡充してきたところであり、職員の健康の保持増進を図ることが公務能率や行政サービスの向上につながるという健康経営の考え方を今後も可能な限り取り入れて事業を推進してまいりたいと思います。