各分野や各地域に人材供給を促す誘導策の強化について
玉井質問

人口急減、超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し政府一体となって取り組み、地方と各地域がそれぞれの特徴を生かした自律的で持続的な社会を創生できるようにと、まち・ひと・しごと創生本部が設置されました。中でも人口の変化が地域の将来に与える影響は大きいことから本県では、昨年12月、人口問題総合戦略本部を設置し、来月には県の人口ビジョン・総合戦略が策定されることとなっております。さきの2月議会においても、人口減少問題や若手人材の確保策などについてたださせていただきましたが、地元大学と連携を図り、地域医療を守り育てる仕組みづくりを構築した福井県高浜町の事例を参考に、この問題に触れてみたいと思います。

福井県最西端に位置する高浜町は、人口約1万1,000人、高齢化率28.4%、主な産業といえば漁業、農業、観光業で、原子力発電所が立地されております。町内の医療機関は一般40床、療養75床から成るJCHO若狭高浜病院、無床の国保診療所に内科と外科の開業医院しかありません。2004年に導入された新医師臨床研修制度により、2008年町内唯一の病院であった高浜病院の常勤医師が3人まで減少したことを機に、翌年、福井大学地域プライマリケア講座を設立したのです。

当時、都道府県が大学医学部に寄附するスタイルは幾つか事例があったものの、市町村が主体となる講座の開設は全国で地域医療再生に向けての画期的な取り組みだったと言えるのではないかと思います。寄附講座は3年間で6,000万円を投じて開設され、医療、行政、大学、住民が四位一体となって地域の医師は地域で育て、地域で守るという地域医療体制がつくられ、町内常勤医師数は2008年の5人から2012年には10人に、研修医・医学生は48人から101人を数えるまでに至ったのです。

地域が必要とする総合診療に精通した医師の育成では、医学生の卒業前研修や研修医の初期・後期研修を開催し、プライマリケアの考え方から総合医と専門医の連携のあり方、介護分野との多職種連携の手法を学ぶとともに、地域医療に興味があり海好きな医学生、研修医、看護学生を参加資格とし、「夏だ!海と地域医療体験ツアーin高浜」と銘打ったイベントを毎年開催するほか、たかはま海の親プロジェクトでは、ホームステイ希望の学生を受け入れるボランティアの里親を募集するなど地域の医療の学びとともに、地域が誇りとする美しい海のある高浜町との関係をつなぎとめる取り組みが奏功し、2013年度だけで123人が高浜町を訪れるとともに、地元女性との結婚や卒業後、居住する学生もいらっしゃるとのことでした。

高浜町の事例は、これからの地域医療のありようにとどまらず、地方大学の役割が重視され、とりわけ地域への人材供給拠点として期待に応えたものであり、ソーシャル・キャピタルの概念に沿うものと考えられます。

本県においても、水産養殖に関する研究を行う愛媛大学南予水産研究センターを愛媛大学と日本の養殖漁業の中心地の一つである愛南町が共同で設置し、開設から7年、大学と地域が交流しながら一体となった活動が展開されています。同センターの設置は、町の養殖業発展への希望となり、若手後継者の意識の高揚など、大学が来たことによって地域に変化があると伺っております。少子化により地域間の学生争奪が激しくなる中、地元の大学と自治体が連携して求心力を維持、強化する取り組みが、今後ますます求められてくるものと考えます。

そこで、お伺いいたします。
地方創生の視点から地元大学と連携し、県内の各分野や各地域に人材供給を促す誘導策を強化してはと考えるがどうか。また、大学の研究拠点となる県下市町においても応分の受益負担を行い、地域が一緒になって人材を下支えする風土づくりが必要だと考えますが、御所見をお伺いしたいのであります。


理事者答弁(門田泰広企画振興部長)

県では、地元大学の地域における知の拠点としての機能に着目し、これまで産業振興や防災・減災対策、地域医療など幅広い分野で大学との連携に取り組んでいるところでございますが、県内各地域で人口減少が深刻化する中、地元大学による専門性を持った人材の育成や供給は、地域の持続的な発展を図る上で極めて重要になるものと認識をいたしております。

このような中で、特に愛媛大学とは、医療の寄附講座や南予水産研究センター、紙産業特別コースの開設などを通じまして地域産業の発展に貢献する人材の育成に取り組んでいるところでございますが、このほか来年度、愛媛大学が新設をいたします社会共創学部において行われるフィールドワークやインターンシップなどを活用した実践型人材の育成や地元就職の促進を図るこの取り組みについても、産業界などとの連携をしながら県として最大限の支援、協力を行い、県内の各分野や各地域への人材供給の促進を図ってまいりたいと考えております。

また、あわせてお尋ねのございました県内の市町が主体となった連携の取り組みについてでございますが、既に県内の13の市町が、愛媛大学を初めとした地元大学と連携協定を締結しております。こうした中で、特に西条市におきましては、新たに来年4月から産学連携の拠点となる地域創生センター、仮称でございますが、このセンターを開設し、幅広い分野で地方創生に取り組むというふうに聞いておりまして、県といたしましても、こうした地域の主体的な取り組みが県内にさらに広がっていきますよう大学と市町との橋渡しに努めますとともに、地元大学との連携をこれまで以上に深めながら地域を担う人材の育成や県内定着に取り組んでまいりたいと考えております。