内閣総理大臣の発言に対する知事の受け止めについて
玉井質問

安倍総理大臣は、本年2月、施政方針演説の中で原子力発電所の再稼働について、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた原発は、その科学的・技術的な判断を尊重し再稼働を進めるとし、8月11日、九州電力川内発電所1号機が、全国の原子力発電所が停止してから約2年ぶりの稼働となりました。四国電力伊方発電所3号機では、2013年7月16日、原子力規制委員会において1回目となる原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合が開かれて以降、2年を費やして去る7月15日、新規制基準に適合すると認められ、原子炉設置変更許可が決定されました。

以降、県議会では、精力的にエネルギー・危機管理対策特別委員会が開催され、原子力規制庁や内閣府、資源エネルギー庁や愛媛県伊方原子力発電所環境安全管理委員会原子力安全専門部会、四国電力などを参考人として招聘し、伊方発電所再稼働に係る諸案件についてさまざまな角度から真摯に議論がされております。また、県では、国任せにするのではなく、独自に事業者に求めたさらなる揺れ対策としてのおおむね1,000ガルの耐震裕度確保について、伊方原子力発電所環境安全管理委員会原子力安全専門部会において確認するとともに、国の原子力規制委員会が適合していると結論づけた審査についても同委員会が審査結果は妥当と判断するとの報告書をまとめられました。

今後、地元の了解手続に並行する形で工事計画や保安規定の補正申請書の審査・許可、使用前検査と続いてまいりますが、私は、技術的な安全に対する一定の基準はクリアされたものと受けとめております。

しかしながら、冒頭に紹介した職場のおやじの言葉ではありませんが、丁寧に、より丁寧な説明をということから申し上げるならば、田中原子力規制委員会委員長の「基準をクリアしても安全とは言えない」という片言隻語が浮遊してしまっている現状を鑑みれば、正しい理解が得られないことから安全神話の脱却、すなわち科学技術を使ったものにゼロリスクはないという前提に立って事故事象が生じる確率とその事象が生じた際の汚染などの影響を総体として最小化するという安全規制の考え方の本質を丁寧に説明するとともに、国や電力事業者においても、エネルギー基本計画をより実効あるものとするためにも安全性の追求はもとより、緊急時における体制や情報の透明化など多岐にわたる地道な努力により安心を提供することがこれからも求められていると思うのであります。

このような中、中村知事は、7月21日、宮沢経済産業大臣に対し、県民に国の方針や電力事業者の安全対策に対する取り組み姿勢をわかりやすく見える化するとし、以下の8項目について要望されました。

大洲・八幡浜道路の整備促進、大分県への避難訓練に対する協力、伊方発電所敷地の緊急時作業スペース確保への協力、使用済み核燃料の中間貯蔵への国の取り組み方針、高レベル放射性廃棄物の最終処分への取り組み方針、伊方発電所における廃炉技術の研究、経済産業大臣の現地視察と伊方町長との面会、内閣総理大臣の発言、どの項目も県民の安全・安心の向上につながるのならの思いが強くにじみ出ており、将来に向けた原子力政策を語る上で重要な課題だと私は受けとめさせていただいております。
 そこで、知事にお伺いいたします。

原子力発電所の再稼働に当たり安全性を審査する原子力規制委員会は、再稼働の判断には立ち入らないと明言する一方、政府は規制委員会で安全性が確認されれば、地元了解の上で原子力発電所の運転を順次再開すると説明し、県や伊方町を初めとする地元の同意が最も重い判断材料となっています。伊方発電所3号機の安全対策に係る国への要望を受け、9月11日には宮沢経済産業大臣から回答がありました。私は、前向きに評価する一方で、再稼働に対し県民の間に不安の声もあることから、安倍総理からのメッセージ発信については、さらに踏み込んだ回答が必要だと感じました。

この項目について、知事は政府からの回答をどのように受けとめられているのか、御所見をお示しいただきたいのであります。


理事者答弁(中村時広知事)

国への8つの要請をさせていただきましたが、今回の回答は、お話のとおり、本年7月に私が直接宮沢経済産業大臣に行った8項目の要請に対して9月11日に資源エネルギー庁長官が大臣名の文書を持参され説明があったものでありますが、全体としては私の要請に対して誠意を持って対応をいただいていると感じている一方で、内閣総理大臣の言葉を直接いただきたいとの要請に関しては、引き続き本県とコミュニケーションを図っていくというふうな表現になっており、あくまでも中間的な回答であると受けとめています。

長官からは、首相官邸ともよく相談した上で作成したとの説明があり、文書の中にも政策を推進する責任は政府にあり、万一事故が起きた場合には政府が責任を持って対処すること、また、これまでも総理が国会答弁や記者会見等で政府の方針も明確に述べていることなどが明記はされていますが、私としては極めて重大な再起動に関する判断に当たっては、県民を代表する知事として、再起動に伴うあらゆる事柄に対する最終的な国の責任について、国政をあずかられている総理から直接その言葉を伺いたいと申し上げているものであります。この要請自体、国が再稼働の要請をされてきたわけでありますから、愛媛県の知事として当然のことと思っており、その強い思いには、必ずやお応えいただけるものと信じているところでございます。