少子化対策について
玉井質問

 2月11日、建国記念の日に、埼玉県教育委員長などを歴任された明星大学高橋史朗教授の講演を拝聴する機会がありました。氏いわく「日本は今、家庭崩壊の危機に直面している。家庭科教育を抜本的に見直す必要がある」と訴えられていました。家族からの自立、イデオロギーが家族の個人化を強調する家庭科の教科書によって喧伝され、親になる準備教育を担うべき家庭科教育が、逆に少子化の根因である未婚化を推進する役割を果たしてしまった。家庭科の教科書及びその教育内容は個人主義的な傾向を強めてきた。思春期に入り、異性を意識し恋愛や結婚を考える年齢にある高校生に対し、家族のきずなよりも個人の自立、また、結婚に対する希望よりも否定的な意識を教えてきたのが我が国の学校教育だ。個人主義に偏った教育が晩婚化、非婚化や意識的に子供を持たないDINKSの増加を助長し、少子化に対するための政策を幾ら掲げても、一方で家族の形成を妨げるような教育を行っていては効果は相殺されると言われるのです。
 また、それを裏づけるかのように、愛媛大学准教授を経て、現在は茨城大学教育学部の野中美津枝氏が、平成24年6月から7月にかけ愛媛県内の532名の高校生を対象にアンケートした結婚、出産・保育、家庭形成意識、家庭科の内容についての調査・分析結果を、日本家庭科教育学会大会において次のような発表をされております。
 自分の結婚に関する意識を見ると、「自分が結婚できる」が54.5%と低く、高校生の2人に1人が結婚できないと思っており、既に結婚難を意識しております。結婚願望については、「絶対したい」は38.2%にとどまり、結婚願望がない者が13.4%、結婚のデメリットについては男女差が大きく、女子は「家事に縛られる」、男子は「責任が重い」が最も高く、ジェンダー意識が強くなっています。子育て観については、87%の者が子供を望んでいるが、約1割の者は高校生の段階で将来的には子供を望んでいない。その理由は、これも男女差が見られ、男子は「自分の生き方を大切にしたい」、女子は「出産や育児への不安から親になる自信がなく、子供を望んでいない」となっています。家庭を築くことが大切に思う家庭形成意識に男女の差は見られず、その意識が高い者は54.5%にとどまっています。家庭形成意識の高い者は自分の家庭が好きだと答えた者が大半であり、自身が育った家庭環境が大きく影響していると考えられます。また、家庭形成意識の高い者は結婚願望が高く、結婚のメリットとして人生の喜びや悲しみを分かち合えると多くの者が考えており、また、理想の子供数3人以上とする者も、家庭形成意識の低い者の20.8%に対して36.9%と高く、子供が欲しい理由として「子供が好き」や「夫婦間のきずなを深めたい」が高く、子供数や子育て観も家庭環境の影響が大きいものと推察されます。
 また、家庭科の好きな内容や身につけたい力として、男子は女子に比べて保育が著しく低い結果となっています。特に家庭形成意識の低い男子に顕著であり、男子への保育分野の学習に対する動機づけが課題となっています。このことについても家庭環境による影響があることから、自身が育った環境で家庭を築くことの大切さを体験的に感じることができにくい者についても、家庭科の授業を通して学習する機会を与えることが必要であり、その社会的意義を理解させることが必要であると閉じています。
 そこで、お伺いいたします。
 2010年から2040年までの30年間で二十から30歳代の女性人口が半分以上減少する可能性のある自治体が全国で896にも及び、そのため出生率が下がり自治体運営が立ち行かなくなると言われる中、県立高等学校における家庭科教育の現状はどうか。また、さきに紹介した高橋教授の指摘や野中准教授のアンケート調査・分析結果などを踏まえ、教育委員会として、今後、家庭形成意識の向上にどのように取り組まれるのか、お聞かせ願いたいのであります。


理事者答弁(仙波隆三教育長)

県立高校における家庭科の教育におきましては、男女が協力して主体的に家庭や地域の生活を創造していけますように、家族や家庭生活のあり方、子供や高齢者の生活と福祉、消費生活、衣食住など家庭生活全般について幅広く学習をしておりまして、全ての生徒が履修をしております。
 特に、家族の意義につきましては、歴史的、文化的、社会的側面から十分に理解をさせますとともに、男女相互の尊重と信頼のもとに協力して夫婦関係や家庭を築くことの重要性、家族のきずなとその一員としての役割等について、生徒同士の議論を踏まえ認識を深めているところです。
 また、妊婦の疑似体験や新生児人形を活用した実習、子育て世帯へのインタビュー等の活動を通し、男女が共同して子供を生み育てることの意義や大切さを学習するとともに、保育所や介護福祉施設への訪問活動に積極的に取り組み、今年度は延べ約1万4,000人の生徒が子育てや高齢者介護などの喜びと責任の重さなどを体験的に学んだところでございます。
 少子化や核家族化が進行する中、家族や子育て等についての学習の必要性はますます高まっておりまして、今後、さらに温かい家庭づくりや結婚、子育て支援策との連携を図り、家庭や地域の協力をいただきながら、家庭科を初めさまざまな実践的、体験的な教育活動を通して、生涯にわたってよりよい家庭生活を創造する意識と能力の育成に努めたいと考えております。


玉井質問

 ところで、皆さんは、「雪マジ!19」というフレーズを御存じでしょうか。ちょうど私の娘が19歳ですが、19歳限定で全国の指定スキー場のリフト券が無料になるというもので、リクルートじゃらんリサーチセンターが企画し、4年前からスタートさせております。知事が昨年末に行かれ風邪を引いたという石鎚スキー場で、この告知チラシを手にいたしました。19歳をターゲットにした背景には、スキーやスノーボードを行う人たちの年齢特性があるようで、年齢が上がるほど参加率が下がるという構造的な特徴が見られるようです。ゴルフなどとは違い、40歳代でデビューする人はほとんどなく、事前調査によると、その鍵になるのが19歳だったようです。そして、そのアプローチが19歳はリフト券無料なのですが、このコンセプトが想像以上に19歳の心をつかんだようで、2シーズン目となる2012年には日本の19歳総人口の約1割に当たる11万人近くが「雪マジ!19」に参加しています。19歳は無料という内容がシンプルで口コミがしやすく、かつ19歳に限定することで、同じ19歳の友達を誘う、あるいは19歳の友達に知らせるという動機がより明確になったのだと思います。また、二十になると有料となるので、その限定感が今すぐに行動するきっかけになったのかもしれません。
 
そこで、お伺いいたします。
 ここで示したように、行政に携わる者だけではなかなか考えつかないこのような大胆な発想や市場調査に裏打ちされたプロの分析が、本県の少子化対策にも求められていると感じています。次年度から向こう5年間の次期えひめ・未来・子育てプランの策定作業が進められていると聞いていますが、県として、年齢層を絞り込んだインパクトのある少子化対策の具体的な事業実施についてどのように考えられているのか、お示し願いたいのであります。


理事者答弁(兵頭昭洋保健福祉部長)

 県では、少子化の流れに歯どめをかけるため、特に少子化の主たる要因でございます未婚化、晩婚化対策としまして、次代の親となる10代から20代の若者に焦点を当てた取り組みに力を入れていく必要があると考えております。
 このため、今年度から、中学生対象の乳幼児ふれあい授業や大学生対象のライフデザイン講座など、年齢層別に結婚や子育ての意識を醸成する機会を提供しているところでございます。
 来年度は、民間の活力やノウハウ、アイデア等を積極的に活用いたしまして、20代をターゲットとした結婚支援イベントやえひめ結婚支援センターにおける成功パターンを踏まえた若者向けセミナーの開催など早期結婚に向けた施策を強化するほか、子育ての悩みや質問などに答え最新の子育て情報を発信するスマホアプリを開発し、妊娠時から切れ目なく支援するワンストップ相談体制を構築したいと考えております。
 県としましては、年齢層に応じたおのおのの施策を展開することはもとより、次代の親となる若者対象の支援策に重点を置き、結婚を望む人が結婚でき、子供を持ちたい人が安心して産み育てることができる愛媛づくりを推進してまいりたいと考えております。

終わりに・・・・

 故郷を守り抜くため、そして世のため人のために命がけで努力した人々のことを、心からの尊敬と感謝の意味を込め、義理人情の「義」に「民」と書いて「義民」と読みます。
 そもそも義民とは、江戸時代、重税にあえぐ自分たちのふるさとと隣人たちを助けようと立ち上がり、嘆願といえば年貢の負担軽減とか遅延あるいは免除という直訴に始まり、ひいては一揆という武力行使を企てた名もなき庶民のことです。しかしながら、伊予西条藩における銀納義民が直訴したことは、米でなく銀で納めることを承認してほしい、いわば年貢制度そのものを改革していただきたいという徳川将軍家や諸藩の藩主や家老衆など、行政の中枢に座る者が誰一人として夢想だにしなかった画期的な提案だったのです。まさに、人口減少が加速する我が愛媛においても、他の県と同様の施策を講じていては県民の生活を守ることはできません。本県の魅力と可能性を熱く語り合い、独自の政策を打ち出していきたいものです。
 この銀納義民の姿は、先月急死された伊藤宏太郎元西条市長をしのぶとともに、発想豊かな政策を矢継ぎ早に繰り出す中村知事の政治手腕にかぶります。
 中村県政第2ステージにおける今後、ますますのリーダーシップに御期待を申し上げながら、今任期最後の質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。