医療提供体制の充実について
玉井質問

 
10年先の暮らしに思いを巡らせてみませんか。10年先の目指すべき将来像を一緒に描いてみませんか」、中村知事のこの呼びかけの背景には、長引く景気低迷などによる閉塞感と不安感に覆われた中、東日本大震災という自然の脅威を目の当たりにし、未曽有の危険に直面した日本がありました。また、人口減少や高齢化など社会構造の大きな変化により、これまで私たちが当たり前のように思っていた生活のありさまが根本から問い直されかねない、先行き不透明な時代を迎えた日本がありました。しかしながら、中村知事は県民の皆さんに対し、現実を正面から受けとめた上で、常に前向きな志を持ち続けてほしい、夢を諦めないでほしい、ひるむことなく立ち向かってほしいとの思いを込め、平成23年9月に本県の目指すべき将来像として第六次愛媛県長期計画、愛媛の未来づくりプランを策定し、3年が経過いたしました。
 今回の代表質問では、基本政策の一つであるやすらぎの愛顔あふれる「えひめ」づくりから、県民の生命に係る本県の医療提供体制について角度を変えながらただしたいと思います。
 本県のみならず地方の医療は、人口減少及び少子高齢化の進行や疾病構造の変化、医療技術の高度化・専門化、県民の保健医療に対する意識の高まりといった著しい環境の変化に加え、近年は、医師、看護職員など医療従事者の不足やその偏在が深刻化するなど、救急医療を初めとする地域に不可欠な医療の確保が困難になっています。
 本県では、地域医療に従事する医師確保を目指し、自治医科大学卒業医師の配置、へき地医療医師確保奨学金制度、地域医療医師確保短期奨学金制度、愛媛大学地域特別枠に対する地域医療医師確保奨学金制度、医師のあっせんや派遣などを行うドクターバンク事業のほか、医学生に対する臨床研修病院合同説明会、地域医療実習の実施、また、医師会を初めとする関係機関との連携など、考え得るさまざまな施策や事業を展開してまいりました。一方、国に対しては、医師の偏在を是正するための義務や規制の見直しのほか、専門医制度や臨床研修制度による偏在是正誘導策の検討、また、総合診療専門医養成に向けた教育体制の充実などを求めてまいりました。
 
そこで、お伺いいたします。
 これら地域医療に従事する医師の確保策を講じることにより、これまでに得られた成果と新たな課題を踏まえた今後の対応策についてお伺いしたいのであります。
 とりわけ医師確保のための奨学金制度を活用した貸与生の動向が気になるところですが、今後、どのような配置計画をお考えなのか、あわせてお伺いいたします。


理事者答弁(中村時広知事)

過疎・高齢化が進行する中、地域医療に従事する医師確保が全県的な課題となっており、これまで自治医科大学卒業医師の活用や愛媛大学と連携した寄附講座方式による医師派遣システムを構築し、医師不足地域に医師等を派遣するなど即戦力となる医師の確保に努め、疲弊する地域医療の支援を行ってきたところでございます。
 また、中長期的な対策として、愛媛大学医学部の地域枠学生を対象とした奨学金制度により、今後、地域で活躍する医師を最大で170名程度養成することとしており、今年度は第1期生が卒業し、来年度から大学病院で2年間の初期研修を実施する予定でございます。
 その後の配置先については、原則として医師不足の公立病院を予定していますが、今後も毎年15名から20名の地域枠学生が卒業するため、大学や地域の公立病院、市町の代表とも十分に協議し、救急医療や小児・周産期医療など必要不可欠な医療が疲弊している地域に優先的に配置したいと考えています。
 今後は、この奨学金貸与医師等を将来にわたって県内に定着させることが課題であると考えており、愛媛大学に設置した県地域医療支援センターと連携して、義務配置中に専門医の資格取得を進めるなど義務明け後も安心して地域医療に従事できる環境を整備することとしており、地域に定着する医師がふえ、県民が安心して暮らすことができる医療提供体制の構築に努めてまいりたいと思います。

玉井質問

次に、地域の医師確保や救急医療体制の確保など地域における医療課題の解決を図ることや、従来の病院ごと、いわゆる点への支援ではなく、都道府県が策定する地域医療再生計画に基づく対象地域全体、いわゆる面への支援を行ってきた従来の地域医療再生基金から、本年度、昨年6月に成立した地域医療介護総合確保推進法に基づき、新たに病床の機能分化・連携に関する事業に174億円、在宅医療の推進に関する事業に206億円、医療従事者の確保・養成に関する事業に524億円の地域医療介護総合確保基金が設置され、1119日、各都道府県に対し交付決定額が示されたところです。
 2月8日、我々愛媛県議会がん対策推進議員連盟も後援させていただいた在宅緩和ケア推進モデル事業、愛媛がんフォーラムが開催されました。
 本県では、県民総ぐるみでがんになっても安心して暮らせる愛媛の実現を目指して精力的に取り組んでいるところですが、平成22年4月の愛媛県がん対策推進条例の施行を踏まえ、「これまでとこれから」と題したパネルディスカッションには岡田志朗議連会長がパネリストとして招かれ、議連としての取り組みを発言されました。その席上、地域医療介護総合確保基金の本県への配分額が全国で下から4番目で、四国内の徳島県17.8億円、香川県14.9億円に遠く及ばない8.4億円の配分にとどまったことに対し、厳しい指摘をされる医療関係者がいらっしゃいました。
 しかしながら、本県の計画については、県内の医師会や医療機関など隅々まで要望調査されているほか、事業内容についてもきちんと精査されていると聞き及んでいるところでございますが、厚生労働省で審査委員を務める産業医科大学の松田晋哉教授の言をかりれば、「ほとんどの県において地域医療計画を進展させるには余りにお粗末な内容の申請であった。配分額は決定したけれども執行保留になるだけだろう」との観測を示されているのです。
 
そこで、お伺いいたします。
 本県にあっては、担当職員の頑張りに対する評価は高いものの、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患といった5疾病に対し、政策を取りまとめて推進していくためのマンパワーは明らかに不足しています。このような状況の中、今後は救急医療、災害医療、僻地医療、周産期医療、小児医療の5事業並びに在宅医療など、患者本位の良質かつ適切な医療を効果的に提供するための体制の構築に取り組むことが求められることとなります。
 広島県ではがん対策課、島根県ではがん対策推進室が設置されているように、医療政策、特にがん対策に専門特化した組織を望む保健医療従事者の声は大きく、行政との緊密な連携により、医療資源の提供を図っていきたいとの思いを強く感じております。
 マンパワーの確保や組織の拡充など、本県における医療政策の推進やその課題解決に向けた体制強化について御所見をお伺いしたいのであります。


理事者答弁(兵頭昭洋保健福祉部長)

 県民の健康を確保し、県民が安心して生活を送るための重要な基盤となる医療提供体制を整備するためには、保健、福祉等の関連分野が密接に連携していくことが重要であると考えておりまして、特にがん対策の分野では、医療機関の機能強化やがん検診の受診促進策、また、がんの教育につきまして各部署が連携、分担して予防や医療の均てん化を推進するなど、医療提供体制の充実等に取り組んでまいりました。
 さらに、医療、保健、福祉分野の一層の連携を図り地域医療政策を総合的に推進するため、今年度、保健福祉部に医療政策監を新設いたしまして、複数の組織が担当している医療政策の一体的運用だけでなく、医師会、大学等との折衝、調整も担当し、福祉や医療の幅広い連携を担っているところでございます。
 医療政策に特化した組織の拡充等につきましては、複数の部署の横断的な連携により対応するとともに、がん対策を初めとする地域医療政策の推進に当たりましては、関係機関との連携が最も重要でありますことから、今後とも医師会や看護協会、大学医学部、関係医療機関等との連携を一層緊密にいたしまして、関係者の力を結集して医療政策の推進に取り組んでまいりたいと考えております。
 なお、地域医療介護総合確保基金の事業採択に当たりまして、他県では事業内容を確定させないまま事業費を大きく枠取りしている事例もあると聞いておりますが、本県におきましては、広く事業要望調査を実施した上で、医療機関等とも十分協議しながら事業内容を確定し、実施可能な事業を採択したところでございまして、今後とも、医療機関等のニーズに的確に対応してまいりたいと考えております。

玉井質問

今や県民の命を守る施策の一つとして救急医療に欠かせない存在となっているドクターヘリについて、来年度、検討委員会を設置し、導入に向けた検討、協議が進められることは、その必要性を提言してきた私を初め、先輩、同僚議員も感慨深いものがあると思っています。
 さきの東日本大震災では、全国から16機のドクターヘリが出動し患者搬送に大活躍したことは記憶に新しいところですが、平成25年度には36道府県に43機のドクターヘリが配備され、46カ所の救命救急センターが参加して2万515件の出動が行われ、1万8,851名の傷病者救命搬送が行われたと日本航空医療学会が発表しています。全国でドクターヘリの配備が進んでいることで着実に地域の救命率が向上しているとの医療現場の声も耳にします。
 本県は、長崎県に次ぐ島嶼部を抱えるとともに、西日本最高峰石鎚山に代表される山岳部を抱えています。さらには、南予地方では交通インフラの基盤もまだまだ脆弱で、地上での救急搬送に時間を要するところです。また、地域医療を我慢強く支えてくださっている医師の配置や負担についても戦力的な対応が期待できます。全国的な普及に向けて、ヘリの運航費や医師などの人件費に係る県の負担について、財政力の弱い都道府県ほど手厚い支援措置が講じられると伺っています。
 さらに、救急医療や災害対策を強化するため県立中央病院の屋上にはヘリポートが整備されるなど、医療資源の充実にあわせ、これまで以上に安心のよりどころ、最後のとりでとしてドクターヘリ導入に県民の期待がますます高まっているのです。
 あわせて、県内各地域での救急医療体制の確保も重要な課題となっています。そのうち新居浜・西条医療圏域では、第二次救急医療を担っている保健医療関係者や消防職員が、第三次救急医療を担う県立新居浜病院の動向を注視しています。県立新居浜病院は、本来的には緊急性、専門性の高い脳卒中、急性心筋梗塞や重症外傷などの複数の診療科領域にわたる疾病など、幅広い疾患に対して高度な専門的医療を総合的に実施するとし、その他の医療機関では対応できない重篤患者への医療を担当し、地域の救急患者を最終的に受け入れる役割を果たすとされています。しかしながら、救急搬送の実態をお伺いしたところ現実はどうも違っているようです。
 そのような中、新居浜・西条医療圏域にある第二次救急医療を担う医療機関から医師が県立新居浜病院に再配置するケースもあり、その場合、これまで受け入れていた救急搬送を断らざるを得ないケースも多くなるのではないかと懸念する声も耳にしております。
 そこで、お伺いいたします。
 ドクターヘリの導入に向けた計画及びスケジュールはどうなっているのか。また、ドクターヘリの導入も含め、県内の医療圏域における今後の救急医療体制の確保についてどのように考えられているのか、御所見をお伺いいたします。

理事者答弁(中村時広知事)

 ドクターヘリは、離島や山岳地域など通常の救急搬送が困難な地域に対応できるものとして県民から期待されており、1期目の4年間で財政基盤の確立に努めた結果、導入のめどが立ちましたことから、今回、具体的な検討を行うこととしたところでございます。
 このため、来年度早々にドクターヘリ導入検討委員会を設置して運航体制などについて関係者とも協議しながら、可能な限り早期の運行実現に向けて取り組みを進めていきたいと考えています。
 一方、救急医療については、救急患者の増加や地域の医師不足により、一部地域にあっては二次医療圏域を超えて広域で対応せざるを得ない例が生じるなど極めて厳しい状況に直面していることから、地域医療介護総合確保基金を活用し、医師不足の救急医療機関への医師派遣システムや夜間の患者対応体制を整え医師の負担軽減を図るなど、地域の救急医療体制の維持、改善に取り組んでおります。
 また、来年度中に、圏域ごとのあるべき医療機能を地域医療構想として示し、地域の医療提供体制の再編等を進めることとしていますが、その中にドクターヘリを活用した広域の救急医療体制の再構築についても盛り込みたいと考えており、今後とも、県民の命を守ることを第一に県内の救急医療の維持、強化に努めてまいりたいと思います。