本県の人口ビジョン及び総合戦略の策定について
玉井質問

 最近、シティプロモーションやシティセールスという言葉をよく見聞きするようになりました。この2つの言葉の定義を我が地元西条市の職員に問いかけてみると、シティプロモーションとは、地域資源や優位性の発掘、編集などによりその価値を高めるとともに、市内外に効果的に訴求し、人、物、金、情報を呼び込み地域経済の活性化を図る一連の行動、また、シティセールスとは、単にまちの魅力を市内外にアピールし関心を持ってもらうだけにとどまらず、住民、企業の誘致や定着を図り将来にわたるまちの活力を得ることにつなげる活動とすぐさま返答があり、その認識の高さに大変驚くとともに、すっきりと納得する自分がありました。一言で言うならば、自治体の営業活動と言いかえられるのではないでしょうか。
 この言葉を本県に当てはめるならば、昨年度設置された愛のくにえひめ営業本部を中心に、本県の柑橘を代表する紅まどんなや愛媛甘とろ豚、媛っこ地鶏、愛育フィッシュに媛すぎ・媛ひのきなど既存の農林水産物を初めとするブランド産品の販路拡大に加え、来年度は、販売間近の愛媛ブランド牛や新たな養殖魚スマ、イチゴの新品種紅い雫などのブランド戦略の展開と販路開拓支援に取り組まれるほか、「スゴ技」企業の情報発信やビジネスマッチング、「すご味」「すごモノ」データベースを活用した国内外でのトップセールスの展開など、地域経済の活性化に尽力されているところです。
 さらには、31の国や地域から約7,300人のサイクリストが参加したサイクリングしまなみを起爆剤として、引き続き市町と連携しながら県全体をサイクリングパラダイスにしていくために愛媛マルゴト自転車道構想を掲げ、自転車新文化の創造に向けた取り組みを推進されようとしております。
 本県の2013年の人口動態の推移は、自然動態で6,784人、社会動態では3,148人減少しており、今から25年後となる2040年の本県の総人口は107万4,618人と推計され、まさにこの人口急減にどう立ち向かっていくのかが喫緊の課題となっております。このような状況を受け、県では昨年8月に人口問題プロジェクトチームを設置し、総合的な対策を検討した後、12月には知事を本部長とする人口問題総合戦略本部を設置し、議論を進めていると伺っております。
 書き物を見ておりますと、今の人口を維持したい、あるいは増加させようとする思考が、冒頭に申し上げた自治体のシティプロモーションやシティセールスに向かわせるとしています。これらを進める目的としては、1、認知度の向上、2、インターネットなどによる情報交流人口の拡大、3、観光やレジャーによる実際の交流人口の増加、4、定住人口の獲得、5、現在生活している住民に愛着心を持ってもらうシビックプライドの形成、6、企業誘致とあり、これらのうちどれを重視するかでその戦略も大きく変わるものとされており、民間企業を含め、あらゆる国民から選ばれる愛媛県に変貌すること、つまり積極的にブランドメッセージを構築、発信することが人口減少時代を生き抜く手段であると言われているのです。
 消費者が、あるサービスや商品を知って購入に至るまでには5段階の習性があるとされています。1番目に認知、2番目に関心、3番目が欲求、そして記憶、購入行動と続きます。自治体の認知度向上が結果的には交流人口や定住人口の増加、また、住民の愛着心の向上によって他の自治体への移動をストップさせるシビックプライドの形成にもつながるものと確信しております。
 現在、今治市では、サッカー元日本代表監督である岡田武史氏のFC今治オーナー就任や、女子中学生のエリート選手を養成するJFAアカデミー今治の開校決定など、サッカーをコンテンツとする地方創生に向けて大きく夢の膨らむ新たな動きがあります。岡田氏からは、我々の夢や挑戦に共感してもらえるスポンサーを東京やアジアからも集めるとの意気込みを示されており、地方創生のモデルとなる可能性を秘めていると考えます。
 昨年末に閣議決定されたまち・ひと・しごと創生総合戦略では、国は、日本全体の人口の将来展望を示す長期ビジョンとそれを踏まえた今後5カ年の総合戦略を策定し、地方と連携して地方創生に取り組むものとされ、各地方公共団体は、国の長期ビジョンと総合戦略を勘案し、地方における安定した雇用の創出や地方への新しい人の流れなど、中長期を見通した地方人口ビジョンと、来年度を初年度とする、今後5カ年の政策目標や施策の基本的方向、具体的な施策内容などをまとめた地方版総合戦略を策定し、実行することとされております。これまでのように国によって基本戦略が立てられ、それに従って都道府県や市町村も同じ内容で対応するという流れ作業ではなく、先進的な民間の取り組み事例も参考にしながら独自の戦略を考え、事業を実施することが求められる時代なのかもしれません。
 
そこで、お伺いいたします。
 人口減少が地域経済の縮小を呼び、地方経済の縮小が人口減少をさらに加速させるという負のスパイラルに陥らないよう、人口減少時代を生き抜くために策定する本県の人口ビジョン及び総合戦略についてどのようなお考えをお持ちか、知事の御所見をお伺いしたいのであります。


理事者答弁(中村時広知事)

少子化の急速な進展に伴って我が国の人口が減少局面に転じる中、本県を初めとする地方においては、東京一極集中に見られるように若年層を中心に大都市圏への人口流出も大きな課題となっているところであり、本県の人口ビジョンと総合戦略においては、若い世代の結婚、出産、子育てに対する支援はもとより、雇用の場の確保や移住促進、地域集落の機能強化などの対策のほか、これらの基盤となる地域経済の底上げに向けた方策を示すことが重要と考えております。
 このため、自治体の営業活動を戦略的に展開し、地域そのものの魅力を発信することにより地域産業の振興や交流人口の増加につなげていくことは重要な視点であり、県産品のブランド化や国内外への販路拡大を初め、サイクリングパラダイスの実現に向けた自転車振興策の推進など本県の特色を生かした施策を強化することが、人口減少問題に対する戦略の柱の一つになるものと考えています。
 このような視点も踏まえ、実効性のある対策を進めるため、庁内の部局横断組織である人口問題総合戦略本部が司令塔となり、新年度早々に設置予定の産官学等による推進体制で幅広く御意見をいただくとともに、市町はもとより関係機関としっかりと連携をとりながら、オール愛媛で人口ビジョンと総合戦略の策定、推進に取り組んでまいりたいと思います。