教育現場から見た少子化対策について
玉井質問

 今から2年以上さかのぼる平成24年4月、西条市内中学校における校長先生との会話、「校長先生、授業中なのに、生徒が3名、校門近くでサボってましたよ」、「玉井さん、校内にいてくれるだけでいいんです」。当時、この中学校の卒業式は、式典中にもかかわらず、会場となっている体育館を一部の生徒が自由に出入りしながら、卒業式が終了するといった状態が数年間続いていたようです。
 先日、同校の卒業生で、当時は周囲に迷惑をかけていたとみずから認める若者が、社名入りの作業服姿で我が家の宅内作業をしてくれました。通信会社の下請会社に就職し、真面目に汗を流して働いているとのことで、あどけなさが残る顔だちの中にも、たくましさを感じました。恐らく彼は、中学校卒業後、みずからの進路について真剣に考え、努力を続けてきたのでしょう。
 ところで、不登校を理由として学校を30日以上長期欠席した県内の小中学生は、昨年度、1,062人で、平成24年度より56人ふえたと報告されています。このことは全国も同じ傾向で、不登校の小中学生は計11万9,617人に上り、前年度より約7,000人増とのことです。
 これら不登校に加え、学校内での別室登校や教育支援センター、適応指導教室で指導要録上の出席扱いとされている児童生徒もかなり実在しているようです。
 本県の本年5月の別室登校の実績は、小学校34人、中学校140人、計174人とのことであります。
 文部科学省国立教育政策研究所の調査・研究の指摘では、本人、家庭、学校、支援機関などの努力により、年間約2万4,000人が何らかの形で復学をしているが、その約2.5倍の6万2,000人が新規に不登校となり、それに加えて、4万2,000人が問題を解決できないまま義務教育を終えてしまっているとの報告もあります。
 保護者からは、学齢期中に何とか学校に復学させたいとの声が寄せられています。なぜ解決にこだわるのかといえば、小中学校段階で不登校をきちんと乗り越えて復学できた場合と、不登校状態のまま卒業した場合や適応指導教室などでの出席措置や別室登校などで形式上卒業した場合とでは、その後の子供の進路や人生設計にさまざまな形で影響が出ているのです。
 その例としては、全国で中退者が年間約5万人も出ている高等学校の中退問題や、平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書において、二十の時点で就職も進学もしていないニート・ひきこもり状態にあると18.1%の者が回答していることが挙げられます。
 このことは、その先にある婚活へとつながる可能性もあります。結婚となれば、生活をともにするわけですから、現代社会では経済力が譲れない結婚条件となっています。若い世代の多くが、安定した給料がなければ家族や子供を養うことはできないと考えることは、自然の成り行きかもしれません。
 不登校といっても、さまざまなタイプがあります。本来ならば、そのタイプに合わせてさまざまな対応を想定しなくてはなりません。
 しかしながら、公的な支援は、登校刺激は行うものの、待つ対応が中心で、あくまでも本人の登校意思任せであり、その間の勉強対応やカウンセリング、進学に必要な指導要録上の出席扱いを中心に組み立てられています。
 学校内外どちらにおいても専門的な相談や指導を受けない生徒が約30%いる中、解決を求める保護者からは、対症療法的な支援が対応の先延ばしのようにも感じられるようで、対症療法的ではない未然防止の考え方に立った支援を求めているのです。
 不登校から、行く行くは経済的な困窮につながり、結婚して我が子の誕生を迎えることができない可能性もあるという負のスパイラルに陥らないためには、愛媛の教育が、対症療法を温存しながらも、全国に先んじて未然防止の姿勢で挑んでいくことが必要だと私は考えます。
 幸い先月には、部局横断で少子化対策などの人口問題に対する総合的な対策を検討する人口問題プロジェクトチームが立ち上がりました。復学にこだわることにより、本県の少子化対策の処方箋にもつながる不登校問題の解決に向けた学校教育、家庭教育に取り組んでいただきたいと思います。
 そこで、お伺いいたします。
 本県では、不登校児童生徒の復学に向け、どのような取り組みを行っているのか。その実績はどうか。また、不登校の初期段階における未然防止に対する取り組みについても、あわせてお聞かせ願いたいのであります。



理事者答弁(仙波隆三教育長)

 不登校児童生徒の復学につきましては、学級担任を中心として養護教諭やスクールカウンセラー等が連携をし、継続的に家庭訪問や児童生徒、保護者との面談を行い、状況に応じて保健室など別室登校や学校行事等への参加を促すなど、登校しやすい環境づくりに努めているところでございます。
 また、県総合教育センターや市教育委員会に適応指導教室を開設し、スポーツを通じた集団適応能力の向上や学習のサポートを行いますほか、市町教育委員会の判断で転校を認めるなど、登校支援に取り組んでいるところでございまして、昨年度は、県内小中学校の不登校児童生徒1,062人のうち、小学生で39.2%の65人、中学生で27.8%の249人に登校などの好ましい変化が見られたところでございます。
 不登校の未然防止につきましては、授業や部活動、学校行事等を通して自己肯定感を高め、子供たちの居場所づくりに努めますとともに、日常的な相談や定期的なアンケート調査、出席状況の点検等により、不登校の兆しを早期に発見し、原因の解消を図っておりまして、特に初期段階におきましては、一人一人の状況に応じて、緊密な家庭訪問や電話連絡、仲のよい友達がかかわることなどを通じ、積極的に登校を働きかけているところでございます。
 本年7月に発表されました文部科学省の不登校に関する追跡調査によりますと、不登校は長期化すると復学が困難になり、初期の潜在期間における支援が重要であると指摘されておりますことから、今後とも、不登校に対する教職員の理解と対応力を高め、家庭や関係機関と連携しながら、初期段階での未然防止に取り組んでまいりたいと考えております。