人口減少下における地域政策のあり方について
玉井質問

 本年5月、元総務大臣の増田寛也氏が座長を務める日本創成会議の人口減少問題検討分科会から発表された将来予測に大きな衝撃を受けました。国立社会保障・人口問題研究所のデータをもとに、地方から都市への人口流出が現状のまま続くとの前提で発表された2040年の県内市町における人口の減少率、さらには、合計特殊出生率の95%を占める二十から30歳代の女性人口が2010年から2040年までの30年間で50%以上減少する可能性が県内の13市町にも上るなど、驚きを禁じ得ませんでした。
 これらの数値が示す劇的な人口変動は、労働力不足による経済活動の停滞や国内市場の縮小を招くなど、社会経済全体に深刻な影響を与え、我が国の将来の存立基盤を揺るがしかねない問題です。
 現在、本県では、少子化対策を重要かつ喫緊の課題と受けとめ、長期計画、愛媛の未来づくりプランの中で、安心して産み育てることができる環境づくりを重点施策に位置づけ、未婚化・晩婚化対策や保育の充実、シニア世代の豊富な経験を生かした子育て環境づくりと、思春期から結婚、妊娠・出産から子育て全般へと、ライフステージごとに切れ目のない事業支援を市町とともに総合的に展開されています。
 にもかかわらず、特効薬に乏しいだけに、昨年の出生数は平成24年の1万1,130人と比べ434人も減少し、戦後最低となっており、まずは、初婚年齢に全てのベクトルをセットした子供を産み育てる政策を推進することで、出生数を増加に振り向けることが望まれるところです。
 他方、今、病院で産声を上げた新生児が成人となる2035年には、県内の人口が約114万人と推計されております。人口変動状況は、地域格差を伴って進行していく傾向が示されていることから、愛媛が生き残っていくためには、全国的な視野を持ち合わせつつ、本県独自の政策の展開や仕組みを構築することが、次代を担う彼ら、彼女らに対する責務だと考えるのであります。
 そのような中、本年5月23日に成立した改正地方自治法では、中核市の指定要件を人口20万人以上の市に変更することや、地域を支え、活性化を図るため、新たな広域連携の仕組みとして連携協約制度が創設されました。
 これまた、前西条市長の口癖だった三局連携という言葉がよみがえります。日本に誇る製紙・パルプ業界のまち四国中央市と住友の城下町新居浜市、半導体や造船を初め多様な産業が集積する西条市とが地域連携し、地域の強みを生かし、弱いところを補うという三局連携はどうか、第二の中核都市誕生というのはどうかと、駆け出し議員の私は何時間も耳を傾けていたことが懐かしく思い出されます。
 そこで、お伺いいたします。
 まずは、人口減少が加速する基礎自治体における行政サービス提供体制のあり方や広域自治体としての県のかかわり方について、今回の地方自治法の改正も踏まえ、今後、どのようなお考えをお持ちなのか、御所見をお聞かせ願いたいのであります。
 次に、人口減少と高度成長期に集中して整備された橋やトンネルといった公共土木施設の耐用年数を重ね合わせてみれば、今後、特にその維持管理の問題により多くのウエートが置かれ、より効果的、効率的な維持管理が行われるような選択肢を実行することが求められる社会になることは想像に難しくありません。
 そこで、お伺いいたします。
 人口減少が加速する時代にあって、公共土木施設の整備や維持管理は、地域の理解を得ながら、あれもこれもから、あれかこれか、つまり選択と集中の視点が大胆に求められていくと考えますが、県としての今後の方向性をお示しいただきたいのであります。



理事者答弁(中村時広知事)

 本県の市町は、住民ニーズに応じた行政サービスを持続的に提供するため、合併などを通じ、行財政基盤の強化に努めてきたところでありますが、今後も、急速な人口減少、少子高齢化により、住民1人当たりの行政コストの増大への対応や一層きめ細かな行政サービスの提供が求められることから、引き続き、不断の行財政改革を通じて、基礎自治体としての最適な体制を求めていく必要があると思います。
 こうした中、今回の地方自治法の改正により、地方公共団体間で、産業振興や介護、子育て支援などの幅広い分野において、お互いの強みを生かし弱みを補うことを可能とする連携協約制度が創設され、この新たな仕組みは最適な体制づくりの選択肢の一つであることから、市町のニーズに応じて活用されるよう助言してまいりたいと思います。
 ただ本県では、国の法改正以前より、全国に先駆けて、地方自治を担う県と市町が対等の立場でチーム愛媛として幅広い分野で連携を進めることにより、単に行政サービス提供体制の維持にとどまらず、二重行政の解消や行政サービスの質の向上などの成果を上げてきているところでございます。
 これまでの取り組みを通じ、県と市町が一丸となる機運醸成が図られてきたと感じておりますが、今後は、先般策定した県・市町連携推進プラン26年度版に掲げた小規模・高齢化集落対策や空き家対策など、人口減少時代に対応した取り組みを一層拡大、深化、発展させることにより、これまで以上に県と市町が連携して行政の総合力が発揮できるよう、尽力してまいりたいと思います。


理事者答弁(田村弘文土木部長)

 本県の公共土木施設の整備は、厳しい財政状況の中、コストの縮減を図りながら、選択と集中によりまして、緊急かつ重要性の高い箇所から優先的に進めるとともに、既存のストックを有効に活用するため、施設の適切な維持や耐震化等にも取り組んでいるところでありますが、社会資本整備は、依然として全国に比べおくれている状況にあります。
 また、近年では、南海トラフ地震や豪雨による土砂災害等の大規模災害に備える対策のほか、20年後には約半数の施設が建設後50年を経過する公共土木施設の長寿命化対策など、県民の安全・安心を支える施設の整備や良好な維持管理が一層必要になるとともに、高速道路の延伸を初めとする地域活性化に必要な基盤づくりなど、さまざまな事業を進めなければならない状況に直面しています。
 このため、今後とも、緊急輸送道路や海岸堤防の整備などの防災・減災対策に加えまして、施設の延命化による健全な機能の保持、耐震補強による既存施設の質的向上等に軸足を置きつつ、将来の人口減少などの社会情勢の変化や地域の意向にも配慮しながら、県民にとって真に必要な施設の整備と維持管理に努めてまいりたいと考えています。