人口減少社会における地域活性化対策について
玉井質問

 この問題を取り上げてみようと思ったとき、人づくり、ものづくり、仕組みづくりに考動すると標榜されていた前西条市長のことが思い出されました。人口減少、少子高齢化など、地域を取り巻く環境が厳しい時代を迎え、工業誘致や公共工事など、地域に不足するものを外から補う、ないものねだりによる地域活性化策では、衰退に歯どめがかかりにくいとみずからが判断され、人間関係を駆使し、後に述べる未来都市モデルプロジェクト実証地域への指定を目指しての縦横無尽ぶりでした。
 無論、経済的な効果については、プロジェクト開始から日が浅いために、まだまだ限定的ではありますが、これからの愛媛県内、あちらこちらで元気を創造する声が上がればとの思いから質問をいたします。
 地域活性化を目指すとき、よそ者、若者などを活用せよとよく耳にいたします。
 事実、過疎地域の活性化を目指し、総務省が平成21年に地域おこし協力隊を創設し、全国各地から名乗り出た隊員が地方へと入り込み、衰退傾向にある観光や第一次産業などによそ者の力が加わり、地域活性化につながっていることは既に御案内のとおりであります。
 本県におきましても、これまで51名が採用され、任期を終えた10名がそのまま愛媛に定住していただいていると伺っております。
 もちろんこの政策についても地域おこし、まちおこしではありますが、ややもすると国や自治体が主導する事例の一つだと考えます。
 また、未曽有の東日本大震災を初めとする過去の災害において、被災者の生活支援と絡めて速やかな復旧・復興を叫ぶ声は大きく、国の予算がつくよう復旧・復興計画が策定されています。
 東日本大震災の被災地では、被災前から人口減少や高齢化の進行などの問題を抱える地域が少なくありませんでした。それらの地域に資金が投じられようとも、それらが有効に活用されないとなれば、地域活性化への道は遠く、結果的に被災者の生活再建にもつながりにくいのではないかと考えるのです。
 一般的に、地域活性化には、よそ者の視点が重要視されます。地域外からさまざまな力を得ることで地域が活性化される可能性が大きく、地域外から人、物、金を導入し、特に、企業から広くアイデアを募り、新たな地域に生まれ変わるという覚悟さえ必要になるのだと思います。
 事実、情報通信機器メーカー大手の富士通が、東日本大震災発災後、避難所で暮らす人々の生の声を聞き、その要望に沿って介護・医療など専門のNPOへつなぐことで課題解決を果たしており、地域の復興や活性化に寄与する企業の視点を生かすことが不可欠な時代だと感じていました。
 また、県下有数の農産地である我がまち西条では、既に企業との二人三脚で地域農業の活性化の道を歩み始めています。
 プロジェクトの中核的な事業主体として、農業生産を担うサンライズファーム西条を設立し、農薬事業などを通して農産物の栽培履歴管理システムを構築する住友化学や、公設民営型の産業支援機関である西条産業情報支援センター、農地確保に動く地元JA、ネットワークカメラによる監視技術を保有するパナソニック、子会社が農業機械事業を展開する三菱重工らが持ち寄る各種経営資源に加え、日立造船のGPS関連技術や大日本印刷のICタグ技術などの先進技術の活用により、農業生産者の省力化や農産物流通の効率化を目指しているのが西条農業革新都市プロジェクトです。
 また、農業の生産者に対し、先進技術への取り組み状況やその採算性など実証実験に関する詳細な情報を発信し、プロジェクトへの参加を促すとともに、これらプロジェクトの推進を円滑化するため、市庁舎内に農業革新都市推進室を設置し、総合特区の申請、各種連携・産業集積を促進するための体制整備、さらには、プロジェクトの拡大に伴い活性化が見込まれる食品関連事業の創設・誘致に際し、農商工、産学官などの多様な連携を提案、調整し、地域の活性化につなげているのです。
 これまで人口減少基調にあった地方圏を中心に、地域活性化のためのさまざまな動きとして、工業誘致や観光振興、地場産業やベンチャー企業の育成、まちづくり三法などによる中心市街地の活性化などが挙げられてきましたが、これらの検証結果とともに、シンクタンクの調査によると、事業として地域活性化に取り組むことが、CSR、企業の社会的責任の大きな柱と位置づけている企業も多いことがわかっております。
 そこで、お伺いいたします。
 人口減少が著しい過疎・中山間地域や離島を多く抱える本県にあって、地域の活性化のためには、これまでに申し上げた企業を初め、NPOや大学など、外部のさまざまな力を結集することが重要と考えますが、知事の御所見をお聞かせ願いたいのであります。



理事者答弁(中村時広知事)

 人口減少の影響が大きい地方において、地域の課題解決や活性化を図るためには、企業や大学等の力を積極的に導入することが必要と考えており、特に、企業が有する経営ノウハウや資金力、ネットワークを活用することによって、より効果的でより斬新な事業が展開できるのではないかと考えています。
 このため、本県では、地域活性化に取り組もうとする企業等との協働を積極的に推進しており、本県の技術や産品の販路拡大等を目指して、国内外での商談会の合同開催など、地元金融機関等との連携や大手飲料メーカー、コンビニチェーン等との連携協定の締結により、各種事業を展開するとともに、自転車新文化の普及・定着に向け、世界最大の自転車メーカーであるジャイアント社や日本マイクロソフト社などの全面的な支援のもと、強力な情報発信を行うほか、国内外からの誘客拡大をにらみ、多彩な企業が参画して観光地等への無料Wi−Fiスポットの整備を進めるなど、さまざまな分野で企業の力を結集した取り組みを進めているところでございます。
 また、大学との連携で、新たな養殖魚種の生産技術開発や柑橘の機能性成分を活用した食材開発などの共同研究に取り組むとともに、愛媛大学では、自治体や企業との連携のもと、地域産業を担う人材育成の強化に向けて教育課程の拡充等に着手するなど、地元大学との協働が進んでいるほか、ICT企業との共同による農業クラウドの活用、六次産業化を目指して異業種ネットワークを構築するろくじすとクラブの結成など、さまざまな力を組み合わせることで地域活性化につなげる取り組みが広がっています。
 かつて松山市の仕事をしているときは、坂の上の雲のまちづくりで、なかなかその価値を市内の皆さんが受けとめ切れていなかったこともあって、市外、県外の方々の力をかりるというところからスタートいたしました。そのことによって、市民の皆さんがその価値に徐々に気づいていく。そして、ころ合いを見て、地元の企業、価値を受けとめた企業にいろんな形で協力をしていただくという手法をとらせていただきました。
 今回、県でサイクリング新文化、自転車新文化を拡大するのも、同じ手法を使わせていただいておりますけれども、よその人たちの方々の力をかりるというのも、地域活性化には非常に重要なポイントになるのではなかろうかと思います。
 近年、企業の社会的責任や大学の地域貢献に関する関心は一層高まっており、こうした力を結集して社会のさまざまな課題に対応することはますます重要となってきておりますから、今後とも、企業や大学などとの連携を深め、チーム愛媛としてスクラムを組んで地域活性化に取り組んでまいりたいと思います。