フェリー航路活性化による国土軸の形成について
玉井質問

都道府県議会議員が集い、和気あいあいと交流ができる場の一つに、全国都道府県議会議員親善野球大会があります。
 本年の開催は熊本県、8月23日8時15分、強豪愛媛県議会メンバーを乗せたバスは議事堂前を出発、三崎港から佐賀関港に国道九四フェリーで渡り、九州横断自動車道の佐賀県鳥栖ジャンクション経由で熊本県入り、8時間を要する移動となりました。
 ちなみに、愛知県議会議員は、新幹線利用で名古屋から4時間10分、東京から新幹線を利用しても6時間弱ですから、空路がなく、鉄道の乗り入れもない本県と九州各県を結ぶ重要な交通手段として、フェリー航路の位置づけがあります。
 野球大会レセプションにおいて、豊予海峡を挟んだお隣大分県の仲間の議員から、「玉ちゃん、この最近、愛媛は広島を見とるね」と言葉をかけられたので、「カウンターパートやけん、広島はもちろんやけど、東九州自動車道が開通する宮崎や大分にも目は向いとるよ」と軽く返しておきました。
太平洋新国土軸構想については、豊予海峡ルートの鉄道用海底トンネルあるいは橋梁といったハード面の整備が議論の中心となりましたが、昨今の社会情勢や国・地方の厳しい財政状況を踏まえると、これらの近い将来の実現は困難であり、平成20年7月に閣議決定された国土形成計画では、豊予海峡ルートを初めとする海峡横断プロジェクトについては長期的視点から取り組むと、具体的な計画は姿を消してしまいました。
 しかしながら、平成23年3月に発生した東日本大震災により、一極一軸型の国土構想の脆弱さが改めて浮き彫りとなり、複数軸を備えた国土形成の必要性が再認識され、我が国の成長と多重性確保に必要な国土軸の構築など、国土強靱化対策の推進に向け、全国知事会においても緊急提言がされているところです。
 本県においても、今日まで太平洋新国土軸構想や豊予海峡ルート構想の推進を掲げ、関係府県や経済団体で構成される推進協議会のメンバーに加わり、国への政策提言や交流促進事業などの事業費を毎年度約120万円計上してまいりました。
 技術的な建設の可否は別として、計画海域の最大水深は他に類を見ず、また、投資額に対する経済効果の不確実性は容易に想像がつく現状を踏まえると、海上輸送の重要性を我々の認識として共有した上で、フェリー航路の維持・活性化や大規模災害時における緊急輸送ルートの確保により、太平洋新国土軸や豊予海峡ルートを海上輸送により確立することが当面の現実的な選択であることは言うまでもありません。
 私は、先日、太平洋新国土軸構想における橋やトンネルの機能を現在代替しているフェリー航路の現状と課題について、事業者を訪問いたしました。
 まず、フェリー航路における本州−四国間の旅客及び貨物の流れは、本四架橋開通前となる昭和62年と比較したとき、本四架橋3ルートの開通や高速道路網の整備、各種割引制度などの変遷により、平成25年度はトラック72%、乗用車・バス79%、旅客輸送85%と落ち込んでいるのに対し、愛媛−阪神航路のトラック輸送は、6社から1社になったにもかかわらず、50%の数値は大健闘と言えるのではないでしょうか。
 また、八幡浜−臼杵航路は、架橋がないことや大分−松山航路の廃止も相まって、乗用車・バス、旅客、トラック輸送とも堅実な輸送実績となっているほか、船舶が小型で、便数が多く、所要時間の短い三崎−佐賀関航路は、乗用車・バス、旅客輸送が好調となっています。
 冒頭、話題としたように、今年度末には東九州自動車道の佐伯−蒲江間が開通し、大分市から宮崎市までが高速道路でつながり、また、今後、中九州横断道路についても事業化が進み、開通となれば、所要時間約2時間で熊本−大分間が結ばれることになります。さらに、臼杵港では、平成30年度の完成に向け、現在、耐震バースの工事が進捗しています。
 本県においても、大洲・八幡浜自動車道の全線整備や八幡浜港の公共埠頭関連施設エリアにおける耐震バースの移設も待たれ、まさに九州第二の玄関口を標榜する大分県を初め、九州各県と愛媛県が海の道により今まで以上にスピーディーに深く結ばれることは容易に想像がつくのです。
 また、九州を循環する高速道路網の完成により、九州各県の産業、経済、文化の一体的な浮揚と同時に、人、物、情報の流れが変化すると考えられます。
 このことを大分県から見れば、九州第二の玄関口として、四国とのネットワークを構築する交通体系の形成が地域や産業の活性化、生活環境の向上などさまざまな効果をもたらし、県勢発展につながると考え、大分県議会においても議論が深められているところです。
 そこで、お伺いいたします。
 高速道路に接続する道路整備などの利便性向上や、ETCを活用した高速道路との乗り継ぎ割引適用などの政策誘導により、太平洋新国土軸の果たすべき役割を当面はフェリー航路の活性化によって具現化していくことが必要であると考えます。
 また、軽油価格の高騰やCO2削減などの環境対策、長距離ドライバーの人手不足や労働負荷の軽減による安全対策、さらには、災害時における代替輸送ルートの確保という観点からも、国や九州、阪神地方の各府県と連携して、フェリー航路を活用した大分−愛媛−阪神ルートという物流体系を構築する必要があると考えます。
 知事として、フェリー航路の位置づけや今後の展望をどのように描かれておられるのか、お聞かせ願いたいのであります。
 さらに、災害時の船舶による輸送等に関する協定が平成17年2月14日に愛媛県旅客船協会と締結されておりますが、国の防災基本計画には、輸送以外の船舶の活用方法が明確に位置づけられていません。被災者の一時避難など、船舶はいざというときに幅広く活用できます。
 不採算航路からの撤退などにより、県内旅客船事業者が保有する船舶が減少する中、今後、大規模災害が発生する可能性は高まる傾向にあります。
 災害時における民間船舶の活用体制の構築など、今後の取り組みに関する所見についても、あわせてお伺いいたします。


理事者答弁(中村時広知事)

 本県と大分県とを結ぶフェリー航路は、九州−四国間の交流活性化に資するばかりでなく、四国内の高速道路や本州四国連絡高速道路などを介して、南九州と関西を結ぶルートとしても活用されており、西日本の国土軸を考える上で極めて重要な交通インフラであると認識しています。
 その重要度は、今年度末に予定されている東九州自動車道の大分−宮崎間全線開通により、九州各地との接続性が向上することで、さらに高まるものと考えており、本県にとっては、玄関口となる南予地域の入り込み客増大にも寄与し、一層の活性化につながるものと期待するところでございます。
 このため、県では、高速道路と八幡浜港、三崎港とのアクセス向上を図る観点から、大洲・八幡浜自動車道の整備促進を図る一方、昨年度から、航路事業者や市町等と協力して、九州を初め、本県と航路がある各地の行政機関やトラック協会、旅行業協会等を訪問して、フェリー航路を利用した場合の時間短縮効果などの優位性や快適性をアピールするとともに、南予地域で開催されるイベント等もPRし、利用を強力に働きかけているところでございます。
 太平洋新国土軸構想は、昨今の厳しい財政状況もあり、海峡横断プロジェクトが事実上中断されるなど、大変厳しい状況にありますが、この構想の重要性、必要性は変わりないと考えており、将来に夢をつなぐためにも、フェリー航路を活用した大分−愛媛−阪神ルートの利用が増加し、物流・人流の一大動脈としての機能が拡大されるよう、今後とも、大分県を初めとする関係府県や市町、航路事業者等と連携して、航路の活性化に取り組んでまいりたいと思います。

理事者答弁(門田泰広企画振興部長)

 本県の地域防災計画では、大規模災害が発生し、緊急に海上輸送などが必要となった場合は、災害の状況に応じて、海上保安部や自衛隊などの公的機関に加え、フェリーや貨物船などの民間船舶にも協力いただくこととしているほか、船舶を宿泊施設として活用することも明記しておるところでございます。
 また、具体的には、お話のあった平成17年2月、愛媛県旅客船協会と締結をいたしました災害時の船舶による輸送等に関する協定におきまして、災害発生時に、県の要請に応じて、各事業者が被災者や応急対策などの実施に必要な人員、資機材などの輸送のほか、応急的な避難施設としての対応なども行うこととしておりまして、協会には、県が行う防災訓練に参加して手順の確認を行っていただいているところでございまして、今後も引き続き連携体制を強化し、実効性の向上を図っていくことといたしております。
 さらに、これに加えまして、四国運輸局が南海トラフ巨大地震などの大規模災害の発生を想定して設置いたしました四国におけるフェリーを活用した災害に強い輸送システム検討協議会、これに本県も参画をいたしまして、具体的な災害時の対応について検討を進めてきたところでございまして、今後とも、日ごろから国や関係事業者などと連携を密にして、より効果的に災害対応ができるよう、フェリーの活用体制の構築に取り組んでまいりたいと考えております。