地域ブランドしまなみ海道の確立について
玉井質問

世界から注目を集めるアートな島の誕生まで24年、瀬戸内の美しい風景に溶け込むアートを時間をかけてつくることで、どこにもない特別な場所を生み出しているのが、瀬戸内海に浮かぶ直島だと言われております。アートに疎遠な私が、胸を踊らせ、自然と足を向かせる魅力がこの島にはあるのです。
 御案内のとおり、日本の原風景とも言える現在の直島は、かつて日本が高度成長期を迎えたのと同時に失われ、取り戻すきっかけをつくったのは、自然と島民の暮らしに溶け込む現代アートや建築だったと言われております。
 2010年には、この島を中心に7つの島々を舞台に瀬戸内国際芸術祭が開催され、会期中には、全体で90万人以上、直島だけでも約30万人が訪れ、経済効果は実に約111億円であったと試算されています。
 この芸術祭は、3年に一度のトリエンナーレ形式で開催され、2回目となる昨年は、12の島でアートや島の暮らしを季節の移ろいとともに楽しんでもらおうと、春、夏、秋の3季制を導入し、総来場者約107万人、約132億円と来場者、経済波及効果とも前回を大幅に上回りました。
 芸術祭開催年以外にも、一年を通した誘客・発信のための活動や、こえび隊と命名されたボランティアサポーターの存在も見逃すことはできず、世界に認知された地域ブランドの成功例の一つだと言えるのではないでしょうか。
 また、昨年2月定例会代表質問の中で、湯崎広島県知事が、地方自治体で初めてCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)とコラボし、戦略的広報に取り組み、その成果がウエブのアクセス数やテレビの視聴率などに如実にあらわれていることについて触れましたが、戦略的な広報も重要なポイントの一つだと考えます。
 本当はすごい広島県の魅力を全国的には知られていないことが惜しい。この「おしい!」というキャッチコピーでキャンペーンを仕立て、県内あちらこちらでコラボ企画が生まれ、そのインパクトは絶大で、相乗効果を高めるだけでなく、継続的なものにする動きもあると聞いています。
 数多くある「おしい!」のポスターの中に、見つけてしまいました、「おしい!しまなみ海道」の文字。自虐的PRを売りにしたキャンペーンの中で、お隣県である広島県民は、数多くの大小の島々が浮かび、行き交う船舶、海面にまばゆいばかりの太陽の光が差し込む穏やかな瀬戸の多島美について、その半分が愛媛県なのが惜しいと記しているのです。
 そして、「おしい!しまなみ海道」と言わしめた、このしまなみ海道を地域ブランドとして全国あるいは世界へと発信するのが、今月21日から10月26日までの約7カ月間にわたり、愛媛・広島両県の島嶼部、臨海部で開催される瀬戸内しまのわ2014です。
 中でもフィナーレを飾るしまなみ海道を活用した世界的規模のサイクリング大会の開催は、まさに知事の真骨頂、さらなる実需の追求であり、その先には地域経済の活性化につながる大イベントだと認識いたしております。
 肝は、地域ブランドであるしまなみ海道をどのようにつくり込むのか。また、どのように発信していくのかであります。
 瀬戸内国際芸術祭が有名芸術家と現代アートによる外側からのアプローチであるのに対し、瀬戸内しまのわ2014は、地域住民と地域イベントによる内側からのアプローチだと言われています。
 決して派手さはありませんが、地域の宝である資源を活用して、深みと意味のある地域イベントをつくり上げることが重要であり、この恵み、地域ブランドをイベント終了後にどう生かしていくのかという一歩先を見据えた地域イベントの企画・展開が不可欠だと思うのであります。
 つまり、地域ブランドのフレームづくりは、バリュー・クリエーター(価値創造人)と名乗る総合プロデューサー佐藤真一氏の手を借りたとしても、最終形は地元愛あふれる地域住民の方々の手で築き上げることが求められているのです。
 地域ブランドの根底は、何と言っても、利用者目線に立ったプロダクトアウトの発想だと思います。マーケティングに合わせず、自分でよいと思ったことを積極的に打ち出していく。その上で周りの意見を聞きながら改善していくことが大切だと考えます。
 つまり、中村知事がここまでブラッシュアップさせてきた手腕が地域ブランドづくりに求められていると感じています。
 先般、本県における先行事例でもある南予いやし博終了後の松野町にお邪魔してきました。
 そこでは、森の国、滑床渓谷を地域ブランドに掲げ、自治体職員が中心となって、地元の住民とともに、強烈なリーダーシップを発揮し、人気を呼んでいるキャニオニングと徳島大歩危のラフティングや四万十川のカヌーといった水遊びを始点として、点から線、線から面につなげる活動に取り組まれている姿を拝見し、深く感銘を受けるとともに、地域の核となるリーダー的な人材の育成の重要性、必要性を改めて感じたところです。
 そこで、お伺いいたします。
 瀬戸内しまのわ2014実施事業、しまなみ海道・国際サイクリング大会実施事業、瀬戸内ブランド推進事業など、多くの愛媛の魅力を発信する関連予算が計上されておりますが、瀬戸内しまのわ2014開催を契機として、しまなみ海道という地域ブランドを全国あるいは世界へどのように発信・浸透させ、地域の新たな元気・活力の場の創造、つまり実需の創出に向けどのように取り組んでいくのか、知事の熱い思いをお聞かせ願いたいのであります。

理事者答弁(中村時広知事)

 お話にありましたとおり、瀬戸内しまのわ2014は、内側から、つまり地域住民が主体となって各種イベントにアプローチしていただき、持続的な地域活性化を図ろうという取り組みであり、地元住民の方々が地域の資源を活用したプログラムを用意し、みずからが観光誘客や地域間交流を図っていくことが最も大切であると考えております。
 このため、これまでのいやし博等の取り組みを踏まえ、観光まちづくりの観点に立ち、コーディネーター等の指導のもと、イベントの担い手やリーダーの育成に取り組んでいるところであり、今後、こうした地域の人材が地元の資源を継続的に磨き上げ、住んでよし、訪れてよしの観光地づくりを進め、その魅力を広く国内外に伝えることで、地域ブランドが創出されていくものと期待をしているところでございます。
 例えば、たまたま昨日、生名島の方に行ってきたんですけれども、生名島では、これまで27年間、いきなマラソン大会というのを継続して開催してきました。昨年の県民との愛顔の触れ合いトークで、そのコース設定が10キロでありましたから、どうしても多くのランナーを呼び込むコース設定になっていないため、ハーフマラソンを導入してはどうかというような提案をさせていただきました。まさかすぐに立ち上がるとは思っていなかったんですけれども、それを受けまして実行委員会の皆さん方が話し合い、今回、初めてハーフマラソンを導入するということで、呼びかけた責任もありましたので、昨日、足を運んでまいりました。
 御案内のとおり、南予には、ハーフマラソンといえば、松野町の桃源郷マラソンもあり、また、西予市の朝霧湖マラソンもあり、そして、松山市の坊ちゃんマラソンもあり、それぞれ2,000人、3,000人、6,000人という規模の大会になっています。
 いきなマラソンは、これまで300人ぐらいで10キロのマラソン大会を継続していたんですけれども、今回初めてのことでありましたが、五、六百人の参加者へと膨らみました。
 率直に、走らせてもいただいたんですが、生名と、それから弓削の橋を含んだコース設定になっておりまして、もちろん改善点はあろうかと思いますけれども、コース自体は、非常に景観といい、これは伸びていく大会になるだろうなということを実感いたしました。
 それは、あくまでもきっかけだけは呼びかけとして言いましたけれども、やはり地域住民の皆さん、実行委員会を中心に、皆さんが話し合って、立ち上がって、そして今回にこぎつけたという点で、非常に魂の入ったイベントになっているなということを痛感しました。
 広場では、久万高原で始まった軽トラ市も、生名で2回目と言っておりましたけれども、軽トラが並んで大会に花を添えておりましたし、まさにしまのわというのはこうした地域住民の主体性から生まれてくるのではないかなということを改めて実感した次第でございます。
 県においては、こうした地域からの発信に合わせまして、しまなみ海道の高いポテンシャルに着目した国際サイクリング大会の開催などにより、世界的な自転車メーカーとも連携しながら、世界に向けて地域ブランドを積極的に情報発信していくとともに、瀬戸内海沿岸の7県で構成する瀬戸内ブランド推進連合においても、瀬戸内を国内外に浸透・定着させる取り組みを今年度から始めたところでございます。
 今後とも、瀬戸内海を取り巻く近年の大きな機運の盛り上がりを生かしながら、しまなみ海道地域における新たな旅行商品の造成や交流の場づくりなど、実需の創出につながる持続的な観光振興策を推進し、地域の活性化を図ってまいりたいと思います。