本県農業のあるべき姿と技術革新への支援について
玉井質問

本物を求める人間はいつの時代も必ずいる。自然を生かしてつくったものを提供すれば、それは必ず買い求められるはずだ。もちろん、手間暇がかかって、大量に売れるものではない。だから、もうかることもないだろう。しかし、生き延びることはできるはずだ。そして、本来、日本の農業は大量生産ではないそうした方向を目指さなければ生き残っていけないのではないかと思う。

これは、本年5月、中村知事が代表を務めるえひめ志高塾に講師として招かれた農業組合法人共働学舎農場の代表、宮嶋望氏の言葉です。
氏は、畜産・酪農の学位を米国ウィスコンシン大学で取得し、農場を開設。農場でつくったラクレットは、1998年ALL JAPANナチュラルチーズコンテストで最高賞を、スイスで開催された2004年第3回山のチーズオリンピックで「さくら」と命名するカマンベールチーズが金賞、グランプリを受賞しているのです。
世界のマーケットにおいて品質で勝負と熱く語る同氏の農場を公明党木村、中議員、愛媛維新の会兵頭議員とともに訪ねました。

政府は、7月25日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉会合に初参加し、今月20日までに、関税撤廃の対象となる全品目の95%を議論のテーブルにのせるとした作業計画を作成するとしております。
国民のコンセンサスを得られるような情報開示は守秘義務契約で公表されていませんが、TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会によると、農産物を関税撤廃した際の農業生産額の減少は220億円、農業所得41億円もの減少となる本県農業への影響額が試算されています。
その影響額の大きさに、全国農業協同組合中央会などの農業関連団体は、聖域を守れと全面的に反対の姿勢を表明する一方で、その影響を認めながらも、「国際社会での日本の位置づけや国益を考えれば仕方ない」、「TPPを機に農業政策を見直し、世界で通用する強い農業に」、「農業・農村の体質を変えるには外圧が必要」などと、TPP参加を国内農業の構造改革に向けた起爆剤にすべきとの声が株式会社や有限会社、農事組合法人など法人の形で農業生産や販売を営む農業経営者から寄せられている調査結果もあります。

安倍政権は、成長戦略の中で農業を成長産業にしていくとしておりますが、日本の農産物は量的に見ると余っており、今後の人口減少によって、その胃袋の大きさは間違いなく縮小していきます。そんな環境下にありますが、日本の農業は間違いなく高いポテンシャルを持ち合わせています。技術力が高く、いいものをつくっているにもかかわらず、正当な対価が得られていないところに問題があり、二次産業、三次産業の知恵を上手にうまく取り入れ、違う角度から付加価値を生み出すことが必要と考えます。

例えば、本県では、「夏にもおいしい愛媛のかんきつ」をキャッチコピーに掲げ、中晩柑の鮮度保持を可能とするMA包装資材の活用や、柑橘類の果実腐敗防止対策としてカワラヨモギ抽出物製剤を民間製薬会社と開発し、特許を取得するなどしておりますが、今、国に求めるべきは、品質向上に向けた一層の研究費への補助であり、技術力の底上げと蓄積、これこそが成長産業への道ではないか、私にはそう思えてならないのであります。

そこで、お伺いいたします。
国では、農林水産業の成長産業化を資金面から後押しする地域単位ごとの農林水産業ファンドの設立が進められており、本県でも、農業でおくれている生産管理分野のIT化を進めるなどの施策が打ち出されています。
県は、愛媛農業の今後のあるべき姿をどう描き、行政として農業経営の技術革新にどのようなサポートをしていこうとするのか、御所見をお聞かせ願いたいのであります。

理事者答弁(中村時広知事)

産地間競争の激化や販売価格の低迷に加え、人口減少に伴って国内市場が縮小する中で、本県農業の活力回復を図るためには、第六次愛媛県長期計画の将来像に示すとおり、愛媛産品のブランド力向上と販路拡大により、愛媛らしさを生かしたもうかる農業を実現することが極めて重要であると認識しております。

このため、県では、高品質ですぐれた農畜産物を「愛」あるブランド産品に認定し、私自身が先頭に立って首都圏や東アジアに売り込むほか、愛のくに えひめ営業本部や海外駐在職員による機動的な営業活動など、愛媛産品の知名度向上と輸出促進等による販路開拓に努めながら、売れる農産品の定着と拡大に邁進しているところでございます。
特に、付加価値の高い本物の農畜産物が求められる中、県では、紅まどんなや甘平、甘とろ豚や媛っこ地鶏など、消費者の嗜好に合わせたおいしくて収益性の高いブランド産品に加え、柑橘の鮮度保持技術や機能性成分の増強、あまおとめの着色向上の研究など、他に類のない愛媛独自の高度な生産技術の開発にも取り組んでいるところでございます。
また、今回の補正予算では、農業クラウドを活用したITを導入し、意欲ある農業者の生産管理や経営・販売の効率化、省力化を図るほか、六次産業化のサポートセンターを県が主導的に運営し、新たな農業ビジネスの創出にも努めるなど、従来の守りの施策に加え、攻めの施策を拡充しながら、農業経営の技術革新と競争力強化を支援することとしています。

農は国の基と言われるように、農業は地域経済を支える基幹産業であり、愛媛農業が確かな生産技術に支えられ、国際競争力を強化し、成長産業として持続的に発展できるよう、経営環境の整備に努めながら、魅力ある愛媛農業の実現を目指していきたいと思います。
なお、先般というよりもきのうの新聞でしたか、徳島県の青果物卸会社が3億円の輸出目標を掲げ、東南アジアへの販路開拓に取り組むとの報道がございました。また、熊本県のJAたまなも、香港に向けて独自にミニトマトの輸出を拡大するなど、民間やJA独自の輸出戦略が広がりつつあります。
本県においても、JA全農えひめが新たな販促組織を設置し、輸出促進に取り組み始めてはおりますが、県の営業活動はあくまでも補助エンジンにすぎず、JAあるいは民間会社等がさらに主体的な営業を展開されてゆくことが重要でありまして、愛媛産品の輸出向上と地域農業の振興のため、関係各位のさらなる営業の強化を心から期待しているところでございます。