原子力発電所再稼働に向けた国と県の対応について
玉井質問

昨年9月19日に発足した原子力規制委員会、初代委員長に就任された田中俊一氏は、「東京電力福島原子力発電所事故への反省をひとときも忘れることなく、独立性と透明性を確保し、電力事業者などと一線を画した規制を必ず実現させなければならない。全ての規制について不断の改善を行い、日本の原子力規制を常に世界で最も厳しいレベルのものに維持していく」との強い決意、覚悟を述べられています。

そんな原子力規制委員会での原子力発電所再稼働に向けた新規制基準適合性審査が7月16日スタートして、ちょうど2カ月を経過しました。
電力事業者から提出された申請内容が不十分との判断から審査保留が相次ぐ一方、多面にわたる解析で各プラント固有の対策や手順が示されているとし、詳細な審査へと進む原子力プラントもあり、二極化が進んでいるとの報道や、活断層評価について全員の見解一致が原則だが、有識者間の対立が根深く、結論がまとまるまで審査自体を保留するなどの報道もされております。
また、田中委員長は、安全性の確保だけが自分たちの責務であり、電力需給や経済的な問題については関知しないとの立場をとるとコメントをされましたが、私には衝撃的なことでした。原子力規制委員会が関知しないと言われた電力需給や経済的な問題を憂う声は、電気料金値上げが現実のものとなり、一段とボルテージが上がって私の耳へと届いてまいります。

企業の大小を問わず、生産活動を営む経営者の声は、共同通信社が先月17日にまとめた主要企業111社のアンケートでもあらわれています。全体の52%に当たる58社が「安全性を確保した上で原子力発電所の再稼働が必要」と答え、「再稼働を急ぐべきではない」は8社、「再稼働すべきではない」は1社にとどまっております。
この背景には、電気料金値上げによる生産コストの上昇が国際競争力の低下や利益の縮小につながることや、安定供給に対する懸念があると思われます。
また、社会損失の側面では、火力発電の炊き増しによる化石燃料の輸入量の増加で、年間3から4兆円の国富が海外に流出していますし、消費税増税は年間約10兆円規模ですが、その3割程度の電気代負担増が加わり、安倍政権が掲げる経済成長実質年率2%を相殺するような負担増になると言われているのです。

このような中、茂木経済産業大臣は、原子力発電所は地元調整が鍵だとして、「地元説明は国がしっかりと責任を果たす。原子力規制委員会が安全と判断しない限り、その原子力発電所の再稼働はない。より厳しい国際基準に沿った新安全基準のもとで原子力規制委員会が安全と判断した場合、その判断を尊重して再稼働を進める」と就任直後にコメントされています。
また、7月8日、松山市で開催された全国知事会で取りまとめた国への提言において、国民理解に向けた取り組み及び地方公共団体への説明責任について、新規制基準の策定など原子力安全規制の取り組み状況や安全性について明確かつ丁寧な説明を原子力規制委員会に求めるとともに、原子力発電所の再稼働の判断に当たっては、安全性やエネルギー政策上の必要性について丁寧に国民に説明するとともに、個別の発電所の取り扱いについて議論を尽くした上で国の責任のもとに判断し、前面に立って公開の場で十分な説明を行い、地域住民及び関係地方公共団体の理解を得ることとし、国の説明責任を強く求めています。

中村知事は、これまで、伊方原子力発電所3号機の再稼働問題は白紙だ、東京電力福島第一原子力発電所事故以来2年半、総合的なエネルギー政策をつかさどる国の方針と実際に事業を行っている電力事業者たる四国電力の姿勢、この2つの条件に加えて、立地地域を含めた地域の判断というものの議論を見きわめながら決めていく、これが基本スタンスだと一貫した姿勢を貫かれておられます。また、現時点では国の方針と電力会社の姿勢を引っ張り出すことが知事の役割だとも言われています。

そこで、お伺いいたします。
国に求めている説明責任について、具体的にどのような形でなされるべきであるとお考えなのか、お聞かせ願いたいのであります。

理事者答弁(中村時広知事)

原発再起動に向けた国の説明責任についてでありますけれども、伊方3号機の再起動の判断に当たりましては、何よりも大前提となる安全性の確保、そして、エネルギー政策上の原子力の位置づけについて、これらをつかさどる国から国民や立地地域に対して責任ある説明がなされることが議論の前提であると考えております。

まず、安全性の確保については、法令に基づく原子炉設置許可権限を有する原子力規制委員会が透明性や客観性を十分確保しながら厳正に安全審査を進めるとともに、その審査結果について、具体的な判断根拠等も含め、わかりやすく説明いただく必要があると思います。
また、エネルギー政策については、我が国全体の根幹にかかわる問題であり、安定かつ安価な供給はもちろん、エネルギーセキュリティー等さまざまな観点から議論を尽くした上で、国が責任を持って確固とした方針を決定し、基礎データ等も示して、将来にわたる原子力政策について説明いただく必要があると思います。

個別の原発の再起動については、こうした安全性及び必要性に関する判断を踏まえ、国としての方針を決定した上で、国政を担う責任ある立場の方から立地地域に対して直接、丁寧かつ説得力のある説明をいただく必要があるものと考えています。

私といたしましては、こうした国の責任ある説明をお聞きした上で、従来からお話ししておりますとおり、四国電力の取り組み姿勢、県民の代表たる県議会の議論等も含めた地元の御意見を踏まえ、総合的に判断してまいりたいと考えております。

玉井質問

県では、本年1月、経済労働部において県内企業108社における電気料金値上げによる県内企業への影響調査を取りまとめられています。電気料金20%値上げによる収益見込みの問いかけに、46.3%の企業が赤字幅拡大や赤字転落を懸念しています。業種を見ると、繊維、鋳造業を含む中小鉄工、パルプ・紙・紙製品が高く、具体的な影響として原材料の値上げを挙げる回答が最も多く、次いで製・商品価格の据え置き要請、受注量・売上高の減少と続いています。
また、製造品出荷額四国第3位、四国屈指の工業集積地を持つ西条市では、本県経済を牽引してきた事業が売却されるパナソニックヘルスケアや経営再建中のルネサスエレクトロニクスにも当然のことながらその波は確実に押し寄せており、従業員やその家族から雇用や労働条件を心配する声が私にも届くところとなっています。

そこで、お伺いいたします。
企業の製造拠点の海外流出により、産業は空洞化し、雇用が失われることや法人税収の減少は国力の弱体化につながります。6月議会における電気料金引き上げに伴う資金繰り支援の拡充に続き、今議会では、中小企業者への資金繰り支援をさらに拡充するため、80億円の融資枠拡大の予算が計上されております。
企業の海外流出を防ぐため、国や企業に対する要望、要請活動も必要なタイミングであると考えておりますが、県は、空洞化対策も含め、県内企業の留置対策にどのように取り組んでいこうとするのか、御所見をお尋ねいたします。

理事者答弁(神野一仁経済労働部長)

原発関連のうち、県内企業の留置対策についてでありますが、まず、電気料金の値上げについて、県では、国に対する重要施策要望や知事会議などあらゆる機会を捉えて、その影響を緩和するための企業支援対策の実施について要請を続けるとともに、県独自に緊急経済対策特別支援資金による金融支援の拡充や節電セミナーの開催など、県内立地企業の円滑な事業継続を支えるための対策に取り組んでおります。
企業の留置対策につきましては、これまでも職員による県内企業約200社への訪問サポートやワンストップ相談窓口の設置を初め、既存立地企業の新たな設備投資への企業立地優遇制度の適用など、きめ細かな対策を講じるとともに、「すご技」データベースを活用した国内外への販路開拓や産学官連携による炭素繊維関連産業の創出など、本県の強みや特性を生かした県内企業への支援に努めているところであります。

今後とも、市町や大学、産業支援機関等との連携によるチーム愛媛一丸となって本県立地企業の事業展開をサポートし、県内留置に全力を挙げるとともに、愛媛は災害が少ない、物価が安い、空港アクセスがよいといった、ややもすると見過ごされがちな恵まれた社会・生活条件等もアピールしながら、県外企業の誘致にも取り組むなど、本県経済の活性化と雇用の維持・創出を積極的に図ってまいりたいと考えております。