消費税増税と社会保障制度の見直しについて
玉井質問

安倍政権は、10月上旬に、増税を実施するか否かの結論に迫られています。このたびの消費税増税は、世代間及び世代内の公平性が確保された社会保障制度を構築することにより、支え合う社会を回復することが我が国の直面する重要課題であることに鑑みて、社会保障制度の改革とともに不断に行政改革を推進することに一段と注力しつつ、経済状態を好転させることを条件として行うとされており、社会保障の安定財源の確保及び財政の健全化を同時に達成することを目指す観点から、消費税の使途の明確化及び税率の引き上げを行うとしています。

消費税率を引き上げるか否かを決める際の最も重要な判断材料である平成25年4月から6月期の国内総生産の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算では2.6%増となり、3四半期連続のプラス成長となっており、環境は整ったと言われておりますが、私たちの家計をのぞいてみると、為替相場の円安基調や原材料価格の高騰が続いていることを受け、9月以降も冷凍食品やワイン、調味料やハム・ソーセージなど食卓に並ぶ生活必需品に加え、電気料金やガス料金といった光熱費も値上がりするなど、私たちの家計は圧迫されており、このような状況下での消費税増税については慎重な判断が求められることは言うまでもありません。

昨年6月21日、当時、政権与党であった民主党、自由民主党、公明党の3党間による社会保障と税の一体改革に関する合意、いわゆる3党合意により、社会保障の安定財源の確保などを図る税制の抜本的な改革を行うための消費増税関連法案に景気弾力条項が盛り込まれ、平成26年4月1日から8%、平成27年10月1日から10%とすることが定められています。
あわせて、消費税率の引き上げに当たっては、社会保障と税の一体改革を行うため、社会保障制度改革国民会議の議論を経て、社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することなどが確認されております。

しかしながら、年金、医療、介護、少子化対策、いわゆる社会保障4分野の制度のあり方を議論してきた社会保障制度改革国民会議が8月6日に首相に提出した報告書の提言内容や、8月21日に閣議決定された社会保障制度改革プログラム法案骨子の内容を見ると、特例で1割負担が続く70歳から74歳の医療費窓口負担を2割に引き上げるほか、介護保険は高所得者の自己負担をふやすなど、高齢者に応分負担を求めたり、介護の充実を含めた社会保障のために消費税を引き上げると言いながら、要支援者向けサービスを介護保険給付から市町村事務に移したり、国民健康保険の保険者を市町村から都道府県に移行したりと、実施のためにはクリアすべきさまざまな課題があるにもかかわらず、国は地方の意見を聞くこともなく、結論ありきの社会保障制度改革を進めようとしているのではないかと危惧の念を抱かざるを得ないのであります。

社会保障制度の見直しとしては、このほかにも、生活保護費のうち生活扶助基準がこの8月から今後3年をかけて段階的に改定されることとなっております。引き下げ幅は子育て世帯が一番大きくなっており、生活保護基準は生活保護以外の低所得者の支援基準と連動しているので、医療支援、保育料減免、就学援助など、所得の低い子育て世帯へのさまざまな支援がカットされる危険性が高いと感じており、社会保障制度のあり方の見直しの重要性を改めて再認識したところです。

中村知事は、国民が選択した政権の継続性によって1,000兆円を超える国債発行残高や社会構造の変化に伴う抜本的な社会保障制度の改革を考えたときに、消費税アップはやむを得ない選択だと述べてこられました。
また、国民に負担を強いるのであれば、先ず隗より始めよで、それを決める側、つまり国会議員、国が、自分たちもこれだけ身を削りましたという姿勢を示さなければ、国民には到底受け入れられるものではない。それができていない間に消費税増税を実施するのは無理があると、国と地方の協議の場の社会保障・税一体改革分科会の中などで常々発言されてこられており、この考えを多くの県民が理解するところとなっています。

そこで、お伺いいたします。
消費税増税の首相判断がすぐそこに迫っている中、現在、国が行っている社会保障制度の見直しの方向性や進め方について、知事はどのような御所見をお持ちなのか、お聞かせ願いたいのであります。

理事者答弁(中村時広知事)

我が国においては、社会経済構造が大きく変化するとともに少子高齢化が急速に進行し、社会保障費は増加の一途をたどっておりまして、社会保障制度全般について、必要な財源確保も含めた抜本改革は急務となっています。

そのような中、先般、国の社会保障制度改革国民会議が打ち出した全ての世代がその能力に応じて支え合う全世代型の社会保障への転換や、将来世代への負担先送りの解消、医療・介護分野における地域重視の改革などの基本的な方向性は、地方分権の趣旨にも合致するものと一定の評価をしているところでございます。
しかしながら、社会保障制度改革に当たっては、住民と直接向き合い、現場を担う地方の意見を十分踏まえることが不可欠であるにもかかわらず、今回の報告書は地方との協議がほとんどないまま取りまとめられており、具体的な改革案についても財源確保を初めとする国の責任が曖昧であるなど多くの課題があり、地方の立場からは、十分議論が尽くされたとは言いがたいものであると捉えています。

特に、国民健康保険については、単に保険者を都道府県に移管するだけでは赤字体質という構造的問題は解決することはなく、将来にわたり安定的な運営と持続可能性を担保するための措置を国の責任において講ずる必要があると思います。
また、都道府県が主体的に医療提供体制を構築することについても、実効性のある方策を講ずる必要があり、都道府県に責任だけが転嫁されることがあってはならず、さらに、介護保険につきましては、要支援者向けサービスの市町村事業への移行が打ち出されておりますけれども、これも地方との協議はほとんどないまま打ち出された政策でありまして、十分な財政措置が講じられなければ地域間不均衡を生じさせる懸念があるのではないかと危惧しております。

今後、政府においては、社会保障制度改革の手順等を定めるプログラム法案を秋の臨時国会に提案するとともに、並行して改革内容を具体化する検討作業を進める方針であるとのことでありますが、結論ありき、スケジュールありきで推し進めることなく、地方との丁寧かつ十分な協議を通じて真に持続可能で実効性のある制度を構築すべきであり、このことを全国知事会等を通じて強く要請していきたいと思います。